以前はゲーマーがユーザーの多くを占めていたOBS Studioですが、リモートワークの需要が急増した2020年以来、ビジネス目的での利用も増えているようです。
ライブ配信で意外にというか、実はかなり重要なのが音質。
音がこもったりすることなく、声が明瞭に聴き取れないといけません。
またエアコンや扇風機などが欠かせない夏場は、こういった機械類が発する環境音(アンビエントノイズ)をどれだけ抑えられるかも音質のカギになります。
そこで、OBS Studioの設定から、手軽にできる音質改善方法を紹介します。
この記事の目次
音声入力キャプチャのオプション
ここからは、すでにOBS Studioを使っている人向けです。
これから初めてOBS Studioを使う方は、すでに別の記事で基本的な設定を紹介しているので先にそちらを参考にしてください。
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さて、音声入力に専用のマイクを使っているばあい、「ソース」の中に”音声入力キャプチャ”というのがあるはずです(設定時に名前を変更しているばあいはそれを)。
これを右クリックするとポップアップメニューの下の方に[フィルタ]というコマンドがあるので、これを選択しましょう。
すると「'音声入力キャプチャ'のためのフィルタ」というダイアログボックスが現れます。
まだ空っぽなので、いちばん左下の[+]ボタンをクリックしてポップアップメニューを開きます。
この中から「ゲイン」「ノイズゲート」「コンプレッサー」の3つを紹介していきます。
今回はまずノイズゲート。
ノイズゲートで雑音をカットする
ノイズゲート(Noise Gate)は文字通り、ノイズ(雑音)を通さないようにブロックする門(ゲート)です。
簡単にいうと、あるていど大きな音量が入力されているときは「喋っている」と判断するのでちゃんと音を通しますが、小さい音のときは喋っていない=雑音と判断して、音を通さずカットしてしまうというしくみ。
つまり黙っていると耳に付くエアコンや扇風機の音が配信にのらないようにします。
こういった雑音は、本当は喋っているときにもずっと鳴ってるわけですが、しっかり声が録れていれば小さい音は気にならないので無視、というわけです。
ノイズゲートの設定オプション
ではノイズゲートを追加しましょう。
先ほどの[+]ボタンをクリックして、ポップアップメニューから[ノイズゲート]コマンドを選択します。
フィルタ名を指定するダイアログボックスが出てきますが、ここはそのまま[OK]をクリックしましょう。特に理由がない限り名前を変更する必要はありません。
すると空欄だった左側のリストに「ノイズゲート」が追加され、右側に5つのオプションが並んでいます。
このうち最初は閉鎖閾値(へいさ・しきいち)と開放閾値(かいほう・しきいち)のふたつを覚えましょう。
あとの3つは、上のふたつだけで調整できないときに補助的に使うと考えてもらえばとりあえずOKです。
開放閾値
まず、開放閾値から紹介します。
開放閾値は、雑音とちゃんとした音声を区別するための境目を決める値です。
つまり、開放閾値より小さい音は雑音として無視され、より大きい音だけが実際にライブ配信に流れます。
ある程度大きな音が来たときだけゲートを開けて、通してやるという感じですね。
閉鎖閾値
閉鎖閾値は、逆に音が小さくなってきたときの基準です。
しゃべっていて、だんだん音が小さくなってきたとき、閉鎖閾値を下回ったら、そこから先の「より小さい音」は雑音と判断してカットします。
開放閾値と閉鎖閾値の決め方
ノイズゲートによっては、開放閾値と閉鎖閾値の区別がなく、単に閾値やしきい値とまとめられているものもあります。
OBS Studioではふたつが独立しているので、これをどう設定するかがまずひとつのポイントになります。
ここでは私(Fukuzumi)がやっているやり方を紹介します。
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1基準になるマイクレベルを設定する
いったんフィルタ設定画面を閉じてOBS Studioのメイン画面に戻ります。
マイクに向かってふつうにしゃべり、レベルメーターを見ながら”音声入力キャプチャ”のゲインを設定します。
大きな声を出してもレベルメーターが赤のところまで振れない程度の音量に調整します。
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2しばらく無音にする
こんどは、しばらく黙ってみます。
するとマイクから入ってきた環境音(アンビエントノイズ)を拾ってレベルメーターがわずかですが常に振れているはずです。
このときメーターが振れているところより下をカットすれば、環境音(アンビエントノイズ)が消えることになります。
もちろん、正確には無音(しゃべっていない)の間だけですが。
そこで、レベルメーターのゲージを参考に、おおよその数字を決めてメモしておきましょう。
これがおおよその開放閾値になります。
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3抑揚を付けてしゃべってみる
続いて、適当に喋り続けます。
ときどき力を込めたり、抜いたりして、声の大きさを変えながら、レベルメーターがどのあたりで振れているかを確認しましょう。
特に、しゃべりを止めた直後、レベルメーターのゲージが下がっていくときに、どのあたりにあるかをメモリ上の値でチェックしておきます。
喋りをやめて、ここから無音になってほしいというポイントがおよその閉鎖閾値です。
ふたつの閾値を設定する
閾値がだいたい決まったら、もういちど音声入力キャプチャのフィルター設定を開いて、それぞれの項目を設定します。
これで基準の設定ができました。
ただしこれだけでうまくいくとは限りませんから、たいていは微調整が必要です。
まず、喋りはじめたときに頭の音が切れていない(入っていない)かどうかチェックします。
喋りはじめの一瞬はだいたい音が小さいので、カットされてしまう可能性があります。
もし喋り始めの声が切れているようだったら、開放閾値が高すぎるのでもう少し下げて、小さい声からゲートを通れるようにしましょう。
次に、語尾のチェックです。
しゃべり終わるときには、声の余韻があってだんだん音量が小さくなっていきます。
もしこのとき、語尾がぶつっと切れているようだったら、閉鎖閾値の値が高すぎるので少し下げてやりましょう。
どちらもマイクに向かって喋り続けながら最適のところを探ります。
閾値の上げすぎには注意
ノイズをカットして配信の音声に入れないようにする、という点ではある程度閾値を高めにしたくなりますが、そうすると、喋り始めや語尾がカットされて不自然になります。
そこで、最初はある程度高めに設定し、実際に喋りってみて徐々に閾値を下げながら不自然にならないポイントを探るのがいいでしょう。
さらに時間で微調整
動作開始時間、保持時間、解除時間の3つを使うことでさらにきめ細かい調整が可能です。
動作開始時間は、閾値より大きな音入った瞬間ゲートを完全に開くのではなく、徐々にゲートを開けて最大になるようにすることで、急激な音量変化を抑えます。
保持時間は、いちどゲートが開いたら、多少の音量変化は無視して一定時間開けっ放しにすることで、抑揚の変化で音が途切れるのを防ぎます。
解除時間は、語尾で音が小さくなっていき閉鎖閾値を下回ったときに、いきなりゲートを閉じてカットしてしまうのではなくゆっくり時間を掛けて閉めることで、音がぶつ切りになるのを防げます。
この3つのオプションを組み合わせることで、より自然な音声になるでしょう。
ノイズゲートの特徴を理解して使おう
ノイズゲートは静かになったときに目立ってくる音だけをカットしてくれますが、雑音そのものを消してしまうわけではありません。
さらに、完全に無音になってしまうので、ばあいによっては放送事故のように感じられる可能性もあります。
そんなときはあえてノイズゲートではなく、ノイズ抑制のほうを使ってみるのもいいかもしれません。
設定が簡単でふたつの方式を選ぶだけなので、こちらも試してみてください。
次回は、ゲインとコンプレッサーのふたつについて紹介します。
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ゲインとコンプレッサーでライブ配信の音量を整える(OBS Studio)
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ノイズゲート使いこなしのポイント
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ノイズゲートは一定以下の音量をカットする
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基準の音量は、開放閾値と閉鎖閾値で設定する
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喋り始めや語尾が途切れない程度に閾値を調整する
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3つの時間を指定することでより自然な音声に
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