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ゲインとコンプレッサーでライブ配信の音量を整える(OBS Studio)

OBS Studioを使ったライブ配信の音質を改善する方法として、前回はノイズゲートによる環境音(雑音)のカットを紹介しました。

続いて今回は、音量を調整して音声を聞き取りやすくするふたつのフィルターを紹介します。

音量を適度に揃えることで話を聴き取りやすくなるので、ぜひトライしてみましょう。

 

前回の記事をまだ読んでいない方は、ぜひそちらも確認しておいてください。

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ゲイン

ゲインはマイクの入力感度を調整します。

 

ゲインが必要なばあい

マイクの入力感度が低くて、メイン画面上の音声ミキサーで音量を上げても適切な音量にならなかったときは使ってみてください。

オーディオインターフェイスの入力ゲイン調整や、メイン画面上の音声ミキサーで調整できるのであれば、使用する必要はありません。

 

 

「ゲイン」フィルターの追加

メニューから[ゲイン]を選択

 

ゲインのレベル設定

マイク感度が充分にあればゲイン調整は必要ない

 

 

 

コンプレッサー

コンプレッサーは音量をできるだけ揃えて聴き取りやすくするツールです。

「コンプレッサー」フィルターの選択

メニューから[コンプレッサー]を選択

 

コンプレッサーの働き

声が大きすぎるときは音量を抑え、逆に小さすぎるときは音量を上げることで、音量の差を小さくします。

これにより、小さな声でも聴き取りやすいレベルまで音量を上げながら、同時に音割れ・音質低下を防ぐことができます。

 

コンプレッサーがあると便利なケース

自宅からビデオ会議に参加するようなばあい、ひとりで喋っているのであまり関係ないと思われるかもしれませんが、マイクの前から少し移動して喋り続けるようなとき、本来なら声が小さくなってしまうのをコンプレッサーで補うことができます。

 

コンプレッサー利用の注意点

ただし、書類を捌く音や物を取ったり置いたりするときの音も大きくなってしまうので注意が必要です。

 

 

コンプレッサーの設定方法

OBS Studioのコンプレッサーには6つの設定があります。

  • 比率

  • 閾値

  • アタックタイム

  • リリースタイム

  • 出力ゲイン

  • サイドチェーン/ダッキングソース

「コンプレッサー」フィルターの設定

コンプレッサーの設定画面

まずは、閾値と比率について覚えましょう。

 

"閾値"で音量の基準を指定

閾値(しきい・ち)は、コンプレッサーが働く基準となります。

「あるところより大きな音」の基準を決めるのがこの値です。

 

閾値で設定した音量より音が大きくなるとその部分だけ自動で音量を下げます。

ただし元の音量より小さくなるわけではありません。

あくまで大きくなりすぎないようにするのが目的です。

 

最初のうちは、デフォルト設定のままで構いませんが、ここを基準にコンプレッサーが動作するというのを理解しておきましょう。

 

"比率"は圧縮の度合いを決める

閾値を超える音量が入ってきたとき、どれくらい音量を下げるかを指定するのが”比率”です。

 

つまり、大きすぎる音をばっさり全部カットしてしまうのではなく、少しオーバーした音はそれなりに圧縮し、大きくオーバーしたら大きく下げるというように働きます。

 

圧縮率を上げることで、大音量での音割れを防げますが、音質は低下します。

いちど大きく比率を上げてみて、そこから声が不自然にならないところまで下げていくのがいいでしょう。

 

閾値と比率のイメージ

閾値と比率の関係がわかりやすいように、動画編集ソフトDaVinci Resolveに搭載されているコンプレッサーの画面を紹介しておきます。

 

DaVinci Resolveのコンプレッサー画面

コンプレッサーの基本を理解しよう(DaVinciResolveの例)

縦の青い線が閾値となる音量で、斜めの線はマイクから入力される音量です。

本来だったら斜めの線は、小さい音から大きな音へ45°の角度で伸びています。

しかし、コンプレッサーを使うことで、閾値を超える大きな音は抑えられて小さくなります。

 

 

閾値を超えた音をどれくらい小さくするかを決めるのがレシオで、OBS Studioだと比率になります。

この画面だと、閾値が-40dBなので、-40dBより小さい音はそのまま入力され、-40dBを超えると、約9分の1まで圧縮することになります。

 

"出力ゲイン"で最終的な音量を調整

大きな音を圧縮したことで、全体の平均的な音量は小さくなります。

 

先ほどのキャプチャー画像でいうと、閾値より上の圧縮された部分は音が小さくなったので、その分だけ音量が小さく感じられるわけです。

 

言い換えるともっと音量を上げられる余裕ができました。

 

そこでこれを利用して全体の音量を上げるのが出力ゲインです。

出力ゲインを上げることで、本来小さかった声も大きく、聴き取りやすくなります。

 

元々大きかった声は、圧縮がかかっているので多少ゲインを上げても音割れすることはありません。

 

再び、DaVinci Resolveのコンプレッサーを例に紹介します。

コンプレッサーの出力ゲイン例

圧縮で余裕ができた分、全体の音量を上げられる

 

メイクアップのスライダーを上げることで、折れ線の形は同じまま、全体の音量を上げることができます。

これで大きな音は抑えつつ、小さかった音を大きくすることができます。

 

アタックタイムとリリースタイム

アタックタイムとリリースタイムは、最初はいじらなくて構いません。

いろいろ使ってみて、声が不自然に感じられるようだったら試してみましょう。

 

アタックタイムは、コンプレッサーが本格的に効き始めるまでの時間です。

大きな音がはいったときいきなり全力で圧縮すると音が不自然になることがあるので、そんなときはアタックタイムを長めにします。

 

リリースタイムは、逆にコンプレッサーが効かなくなるタイミングを調整します。

だんだん音が小さくなっているとき、コンプレッサーが切れて急に本来の音量に戻るとやはり不自然に感じられます。

 

 

そこでマイクからの音が閾値を下回っても少しの間コンプレッサーが効くようにしておけば、急な音量変化を防げます。

楽器演奏の録音では音の余韻を残したいときに長めに設定されます。

 

サイドチェーン/ダッキング

最後に"サイドチェーン/ダッキングのソース"にも軽く触れておきます。

これはビデオ会議ではまず使う必要はありません。

しかし、BGMを流しながらおしゃべりするようなエンターテインメント志向の配信には便利な機能です。

 

簡単にいうと、トークが入っている間はBGMの音量を自動的に抑えて、トークが途切れたら音量が元に戻ってくれます。

 

このような設定をするには、コンプレッサーをBGMのほうに設定します。

そして”サイドチェーン/ダッキングのソース"にマイク入力を指定してやると、マイク入力の音量が閾値を超えたときに、自動でBGMの音声にコンプレッサーを掛けてくれます。

 

実際の設定イメージ

ここでは、実際に私(Fukuzumi)がやっているコンプレッサーの設定イメージを紹介します。

 

step
1
まずレベルを調整

OBS Studioのレベルメーターを見ながら、わざと大きな声を出したり、逆に小声になったりと、音量差を付けて喋ってみます。

 

わざとマイクの位置から外れたところへ動いてみるのもいいでしょう。

 

そして、大きな声をだしてに、レベルメーターが赤いところまで振れないていどに音量を調整しておきます。

 

 

step
2
閾値を仮決めする

小声で喋ったとき、「このあたりは音量を上げたいな」と感じるポイントがあったら、そこの音量レベルをチェックしておいて、そこよりやや大きなレベルを閾値に設定してみます。

 

たとえば-40dB程度でしゃべっているところをもっと大きくしたいなら、いったん-30dBあたりに閾値を設定する感じです。もちろんケースバイケースでいろいろ調整が必要です。

 

 

step
3
比率を指定する

続いて比率(圧縮率)を指定します。

 

いきなり大きめの値を設定しても構いません。

 

このとき音質が劣化して聴き取りづらいようだったら、劣化が感じられなくなるところまで比率を下げます。

 

 

step
4
出力ゲインを上げる

圧縮をかけたことで、レベルメーターは最初に設定したときよりもさらに振れなくなっているはずです。

 

そこで、出力ゲインをあげることで、もともと小さかった声が大きくなります。

 

もちろん、大きな声を出したときにレベルメーターが赤いところまで届かない程度にとどめておいてください

 

 

トーク慣れしていない人こそ使ってほしい

このようにコンプレッサーを使うことで、音量差を減らし、声が聴き取りやすくなります。

ナレーターのように一定音量で喋ることを意識しなくてもいいので、へんに緊張しなくていいというのもメリットでしょう。

 

ただし、小声で毒づいたりするとそれもはっきり聴き取れるようになってしまうから、そこは注意しましょうね。

 

 

 

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