この機会に単なる録音ではなく、ミックス/マスタリングを勉強したいと思い、必要なソフトウェア(プラグイン)をピックアップすることにしました。
この記事の目次
- 1 まずは録音とミックス/マスタリングの学習
- 2 DAW用プラグインを探す
- 3 Melda社の無料配布プラグイン
- 4 Melda製無料プラグインの入手方法
- 5 無料版プラグインの概要
- 6 必要なプラグインはどれ?
- 7 初期学習で必要なものはだいたい揃いそう
まずは録音とミックス/マスタリングの学習
今回収録する音楽ユニットはメインの楽器とバックトラック用の電子楽器という編成です。
電子楽器のほうは打ち込みで音を作っていて、メイン楽器の方は生演奏とのこと。
ビデオカメラでの録音ではなくマルチトラックレコーダーが使えるので、せっかくだったら各楽器を個別に収録してよりよい音に仕上げたいという願望がわいてきました。
音の編集には動画編集ソフトDaVinci Resolveのオーディオ編集機能であるFairlightを使いますが、実際にどんな処理をしたらいいのか判っていないので、まずは学習用の書籍を買うところから始めました。
参考にしたのはリットーミュージックが刊行している”DAWミックス/マスタリング基礎大全”という書籍です。
サンプルの音源をWebサイトからダウンロードできるようになっていて、実際に音を確認しながら実地体験で練習していくようになっています。
実際に行われる典型的な処理例とそれに必要な機材が紹介されているので助かります。
また、巻末には書籍中で紹介している無料版および試用版プラグインのリストもあります。
このほかにも、録音用として”レコーディング/ミキシングの全知識”、動画一般の整音作業用として”映像制作のための自宅で整音テクニック”という2冊も一緒に購入して、大型連休中は知識の習得に費やしました。
DAW用プラグインを探す
ミックスとマスタリング段階で行うベーシックな処理についてはあらかたわかりましたが、実際にどんなツールを使ったらいいのかが問題です。
”DAWミックス/マスタリング基礎大全”にはDAWに組み込んで使うプラグインも紹介されていましたが、いろんなメーカーのツールを使い分けているので(適材適所ということもあるのでしょうが)ひととおり揃えるのもめんどうです。
そこで、以前YouTube動画で紹介されていたMelda Productionという会社が無料でたくさんのツールを配布していることを思い出し、まずそこに必要なツールがないか調べてみました。
Melda社の無料配布プラグイン
Melda Production製プラグインは17のカテゴリに分けられています。
そのうち、無料版を含むのは次の10種です(括弧内の値はプラグイン数)
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Analysis(分析:7)
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Saturation & Distortion(サチュレーション&ディストーション:6)
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Dynamics(ダイナミクス:1)
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Equalizer(イコライザー:1)
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Filter(フィルター:2)
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Mastering(マスタリング:2)
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Mixing(ミキシング:8)
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Pitch(ピッチ:3)
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Reverb(リバーブ:1)
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Stereo(ステレオ:3)
ただしこのカテゴリは検索用の便宜的なものなので、同じプラグインが複数のカテゴリに登録されている場合があります。
無料版がないカテゴリを見るとDrums、Guitar、Keyboardなど音源系が主体のようなので、今回のように楽曲制作ではなく整音的な使い方であれば、無料版でもかなり使えるのではないかと考えています。
ここでMelda Production社のMFreeFXBundleを紹介しているのはあくまで、学習用として無料で一括入手できる手軽さを重視したためです。
各ツールの機能や性能を精査した上での「お奨め」という意味ではありませんので、あらかじめご了承ください。
Melda製無料プラグインの入手方法
インストーラーのダウンロード
step
1配布ページへアクセス
Melda Productionの公式サイトで、MFreeFXBundleのページへアクセスします。
[Free Download]というボタンがあるのでクリックします。
step
2ダウンロードファイルの選択
ダウンロードページではいくつかバージョンを選べますが、左側の「Installer」グループで最新版(2021年6月時点ではV14.16)をダウンロードしておけばいいでしょう。
Windows版とMac版があるので注意してください。
インストーラーのファイルを適当なフォルダーに保存します。
プラグインのインストール
step
3インストール開始
ダウンロードしたインストーラーを実行します。
ユーザーアカウント制御画面が現れるので[はい]をクリック。
step
4インストーラーの設定
インストーラーの画面が現れます。右下の[Next]をクリック。
ライセンス承認画面が現れるので、左下のチェックボックスにマークして次へ。
step
5プラグインタイプの選択
インストールするプラグインのタイプを選択します。
今回はProTools用のAAXプラグインを除くその他をすべてインストールします。
step
6プラグインの選択
必要なプラグインを下段の”FREE EFFECTS”から選択します。
プラグインの概要については次の項を参考にしてください。
右のパネルで[MFreeFXBundle]をクリックすると、無料プラグインすべてが選択されます。
step
7フォルダーの指定
プラグインのインストール先フォルダーを指定します。
32bit版や64bit版などに応じて異なるフォルダーが設定されています。
特に問題なければデフォルトのままにしておくのがいいでしょう。
いろんなソフトでプラグインを共用するとき、デフォルトフォルダーにしておいたほうが見つけやすくなります。
step
8インストール済みプラグインのクリーンアップ
次の画面では、インストール済みプラグインの削除ができます。
"クイッククリーンアップ"と"フルシステムクリーンアップ"が選べます。
今回は”フルシステム クリーンアップ”を実行してみました。
古いプラグインが見つかりましたが、これは故障してしまった旧いPCから移設したHDDに入っているものです。ここでクリーンアップする必要もないので、[Close]をクリックして終了しました。
step
9インストール開始
続いてプラグインのインストールが始まります。
数が多いとそれなりの時間がかかるので少し待ちましょう。
終了画面になったらいちばん下の[Exit]をクリックして、インストール完了です。
無料版プラグインの概要
Melda Productionが無料で提供しているプラグインの概要をカテゴリ別に紹介していきます。
なおプラグイン名の先頭にはかならず”M”がつきます。
Melda Productionの”M”に由来するものでしょうか。
解析系
MAnalyzer
波形をグラフィックに表示するスペクトラルアナライザー&ソノグラム。 ピークメーターやラウドネスメーターを備えています。
MOscillator
波形を作り出すオシレーターです。
MLoudness Analyzer
音量を決定するのに使うラウドネスメーターです。
ラウドネスはYouTubeでも導入されているようです。 動画作品の音量をできるだけ統一できるように、ぜひしっかりと勉強したいと考えています。
MOscilloscope
波形を表示します。
MTuner
楽器の調律に使用するチューナーです。複数の音に対応したポリフォニック仕様。
MNoiseGenerator
ピンクノイズ/ホワイトノイズを発生するノイズジェネレーター。
MStereoScope
ステレオ効果をグラフィカルに表示します。
マスタリングでのステレオ効果確認にぜひ使いこなしたいツールです。
サチュレーション&ディストーション系
MWaveShaper
波形を直接編集できます。
MSaturator
アナログ機器独自の歪みを再現するサチュレーター。
MBitFun
MRingModulator
金属的な音を発生させます。
MFreqShifter
周波数を変更させます。
ピッチシフターとは違い、ハーモニックリレーションシップを維持しないそうです。
MWaveFolder
ディストーションモジュール。
ダイナミクス系
MCompressor
圧縮のカーブを曲線的に設定できるコンプレッサー。
イコライザー系
MEqualizer
スペクトラムアナライザーとソノグラム表示機能を備えた6バンドのイコライザー。
各バンドに7つのフィルタータイプを指定可能。真空管タイプのサチュレーション設定が可能。
フィルター系
MBandPass
ハイパス、ローパスの2バンドフィルター。
MComb
4つの設定が可能なくし型フィルター。
マスタリング系
マスタリング系には、解析系と同じMAnalyzerとMLoudnessAnalyzerがカテゴライズされています。
ミキシング系
MCCGenerator
MIDIのコントロールチェンジ機能。
MAutoPitch
ボーカルおよび単音楽器用のピッチ補正用。フォルマントシフトも可能。
MAGC
サイドチェーンを利用してラウドネスを調整するようです(知識不足ですみません)。
MMetronome
グラフィカル表示とサウンドに対応したメトロノーム。
MUtility
ボリューム、パン、位相反転などの機能をそなえた多目的ツール。
MChannelMatrix
インプットとサイドチェーンの割り当てを管理。
MSpectralPan
周波数帯に応じてパンを設定。
MCharmVerb
MTurboReverbのエンジンをベースにしたリバーブ。
ピッチ系
MTuner、MAutoPitch、MCharmVerbの3つがカテゴライズされています。
リバーブ系
MConvolutionEZ
ルーム、ホール、プレートなどのタイプから選択できるコンボリューションリバーブ。
DAWミックス/マスタリング基礎大全でもフリーウェアの優秀なコンボリューションリバーブとして紹介されています。(P87)
ステレオ系
MStereoExpander
ステレオの広がり感を調整。
MSpectralPan
ミックス系にカテゴライズされているMSpectalPanと同じです。
MStereoScope
解析系にカテゴライズされているMStereoScopeと同じです。
カテゴリーに含まれていないモノ
MFreeformPhase
左右チャンネルの位相を周波数帯ごとに調整。
MTremolo
トレモロ効果。
MPhaser
フェイザー効果。
MVibrato
ヴィブラート効果。
MAutopan
オートパン効果。
MFlanger
フランジャー効果。
MNotepad
コメント入力などに使えるテキストエディタ。
MRecorder
オーディオレコーダー。
MRatio
メインチャンネルとサイドチェーンにクロスフェードをかける。8つのパターンから選択可能。
MRatioMB
6バンド対応のクロスフェード。
必要なプラグインはどれ?
以上がMelda Productionが配布している無料版VSTプラグインです。
この中から特に重要性の高そうなものを、DAWミックス/マスタリング基礎大全の内容を参考にピックアップしてみました。
同書に登場する処理に必要なプラグインをまとめてみると、次のようになりました。
書籍で紹介されている処理 | 該当するMelda製プラグイン名 |
---|---|
イコライザー | MEqualizer |
コンプレッサー | MCompressor |
トランジェントシェイパー | |
サチュレーター/エキサイター | MSaturator |
ディレイ | |
ステレオ効果 | MStereoExpander、MSpectralPan、MStereoScop |
ディエッサー | |
マキシマイザー | |
位相調整 | MFreeformPhase |
ラウドネス調整 | MLoudnessAnalyzer |
量子化ノイズ対策 |
こうしてみると、サウンドメイク/ミックス/マスタリングのどの段階においても、案外リバーブが出てこないのが目を惹きます。
初期学習で必要なものはだいたい揃いそう
まだ実際の処理もプラグインの機能も理解していないのでいろいろ勘違い、見落としがあるかと思いますが初心者がミックス/マスタリングを学ぶのに必要なツールは、だいたいこのMFreeFxBandleで揃ってしまうのではないでしょうか。
バンドルに含まれないものについてですが、ディレイに関してはどんなDAWにも標準でついているのではないかと思います。
歯擦音を軽減するディエッサー(De-esser)は、DaVinci ReslveのFairlightFXに含まれているので問題ありません。
また、DTMを主眼とするDAWミックス/マスタリング基礎大全では、ノイズリダクションやノイズゲートも目立って採り上げられていないようですが、動画収録のひとつとしての音声を考慮した場合はこれらも必要でしょう。
FalirlightFXにはもちろんこれらも搭載されているので、これも問題ありません。
量子化ノイズ対策については、(DAWでゼロから制作したものはともかく)動画で収録した音源についてはあまり気にしなくてよさそうです。
というわけで、基本的なマスタリング/リミックスの学習段階では、DAW標準の機能にMelda ProductionのMFreeFXBundleを加えることでひととおりカバーできそうです。
機能・性能に不足を感じたらその時点で追加なり入れ替えを考えることにします。