CATALYSTシリーズが発表されました。
マルチエフェクターHXシリーズの技術を利用して作られた、オリジナルのアンプモデリング6種類を搭載。
Spider Vシリーズのような液晶+ロータリーエンコーダーとは違い、オーソドックスなギターアンプ風の操作系をもつ、比較的シンプルなアンプに仕上げられているようです。
その一方で、専用アプリケーションを使ったPC上での音作りもできるようなので、当サイトでも採り上げることにしました。
この記事の目次
アナログ風操作のデジタルアンプ
従来Line6から発売されているデジタルモデリングアンプSpider Vシリーズは、ローエンドモデルを除き、液晶パネルとロータリー式のエンコーダーでアンプモデリングのパラメーターやエフェクターの設定を操作できる柔軟な操作性が特徴でした。
それに対し、CATALYSTシリーズは、液晶ディスプレイをもたず基本的な操作はノブで行う、オーソドックスなギターアンプ風のデザイン/レイアウトになっています。
アンプモデリングは6種類
Spider Vシリーズでは、既存の有名モデルを参考にしたものから、Line6オリジナルモデルまでたくさんのアンプモデルを搭載していました。
それに対し、CATALYSTシリーズは、すべてLine6オリジナルの6種類のサウンドに絞り込まれています。
既存アンプのシミュレートやそれをベースにした独自のカスタマイズを求めるならSpider Vシリーズ、最初から作り込まれた音が欲しければCATALYSTシリーズという棲み分けになると思われます。
アンプの種類は次のとおりです。
モデリング名(サウンドタイプ)
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Clarity(CLEAN)
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Aristocrat(BOUTIQUE)
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Carillon(CHIME)
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Voltage(CRUNCH)
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Kinetic(DYNAMIC)
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Oblivion(HI GAIN)
公式動画やメーカーサイトに掲載されているデモ音源を聴いてみると、個人的に元々興味のないHI GAIN以外はどれも使いたくなるサウンドでした。
Spider Vよりはるかにシンプルなので、音作りで悩みたくない人にはよさそうです。
公式チャンネルのサウンド解説
Line6 Japanの公式YouTubeチャンネルに、アンプモデリング解説の動画がありました。
日本語字幕付きなので、モデリングのデザイン意図がよくわかり、お奨めです。
実はこの動画、CATALYSTシリーズを発表する前に、新開発モデルとして紹介されていたものでした。
Clarity(Clean)とCarillon(Chime)について
Aristocrat(Boutique)とKinetic(Dynamic)
2チャンネル 12種類のプリセット
ギター用の入力ジャックはひとつですが、CH1とCH2を切り替えるスイッチがついているため、6タイプのアンプモデリングと併せて、計12種類のプリセットを利用できるようです。
エフェクト
デジタルモデリングアンプならではのエフェクトは、ディレイ/ピッチ/モジュレーションの3カテゴリに、それぞれ6つ。計18種類を搭載しています。
動画を見ると、アンプモデルを選択するセレクターノブがエフェクト選択用に変化するようです。
動画を見ると、それぞれ次のようなタイプが用意されています。カッコ内はベースモデル。
公式ドキュメントに基づくエフェクトモデル名に変更しました。
ディレイ
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Simple Delay(Line6オリジナル)
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Vintage Delay(Line6オリジナル)
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Transister Tape Echo /
Tape Echo(Line6オリジナル) -
Adriatic Delay /
Analog Delay(Line6オリジナル) -
Dual Delay (Line6オリジナル)
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Dynamic ”Ducking” Delay /
Dynamic(Line6オリジナル)
モジュレーション
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PlastiChorus /
Chorus(Arlon ACH-Z Chorus) -
Opto Trem /
Tremolo(Fender Optical Tremolo) -
Script Mod Phaser /
Phaser(MXR Phase 90) -
Gray Flanger /
Flanger(MXR 117 Flanger) -
Ubiquitous Vibe /
U-Vibe(Shin-el Uni-Vibe) -
Rotary
ピッチ/フィルター
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Bass Octaver / Octaver (EBS OctaBass)
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Growler Synth /
Growler(Line6 オリジナル) -
Pitch Harmony (Line6 オリジナル)
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Pitch Shift (Line6 オリジナル)
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Tycoctvia Fuzz / Octave Fuzz (Tycobrahe Octavia)
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Synth String (Line6 オリジナル)
エフェクトの効きを調整するノブはひとつだけなので、アンプ本体ではエフェクター単体のような細かい調整はできません。
リバーブは独立
リバーブは上記のエフェクトとは独立したノブで調整します。
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Hot Spring /
Spring(Line6 オリジナル) -
Hall(Line6 オリジナル)
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Chamber (Line6 オリジナル)
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Plate (Line6 オリジナル)
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Ganymede /
Shimmer(Line6 オリジナル) -
Plateaux /
Modulatede(Line6 オリジナル)
以上の6タイプから選択できます。
リバーブ用ノブもひとつなので、やはり細かい調整はできません。
ブースターはアンプモデルごとに最適化
ここまで見てきてわかるとおり、エフェクトにはブースターやオーバードライブ、ディストーションなどが含まれていません。
その代わり、ブースター用として独立したノブをひとつ備えています。
ブースターはアンプモデリングごとに最適化された6タイプを搭載し、モデリングを切り替えることで自動的に選択されるようです。
専用アプリケーションでカスタマイズ
このようにCATALYSTシリーズは基本的にアンプ本体で操作するようになっていて、Spider Vシリーズのようにパッチ内でシグナルチェーンを変更するといった細かい編集機能は省かれています。
とはいっても無償の専用アプリCatalyst Editでのカスタマイズが可能です。
公式サイトの動画4分30秒辺りを見ると、Catalyst Editでは全パラメーターが1画面にまとめられているようです。
キャプチャした画像で確認してみると、BOOST、ゲイン、マスターボリューム、4バンドイコライザーといったアンプ上のノブと連動するもの以外に、次のようなものが見受けられます。
NOISE GATE
ノイズゲートのオン/オフ切り替えと、スレッショルド、ディケイの調整が可能です。
AMP ADVANCED PARAMS
SAG、BIAS、BIAS Xの3つのノブとHUMスイッチがあります。
真空管アンプの微妙な動作をシミュレートするものかと思われます。
DIRECT OUT / PHONES / USB
キャビネットタイプとマイクタイプのピクトサインが描かれています。
画面上のアイコンをクリックすることで、キャビネットやマイクを変更できます。
一方、最近流行のスピーカーIRの読み込みができるかどうかまではわかりませんでした。
EFFECT
エフェクトのオン/オフと効き具合のほかに、MIXとしてPRE/POSTの選択が可能で、さらにエフェクターのタイプを選択するアイコンが見えます。
REVERB
リバーブのオン/オフと効き具合のほかに、MIXとしてPRE/POSTの選択が可能で、さらにエフェクターのタイプを選択するアイコンが見えます。
EFFECT ADVANCED PARAMS
SYNC、フィードバック、レベル、ワウ/フラッター、ヘッドルームの5つのノブがあります。
REVERB ADVANCED PARAMS
ディケイ、プリディレイ、レベル、トーン、モジュレーション、ピッチ1、ピッチ2の7つのノブがあります。
フットスイッチ対応
別売のフットスイッチを使って、各種エフェクトやリバーブ、ブースターのオン/オフ切り替えを操作できます。
スイッチの動作はCatalyst Editでカスタマイズ可能です。
ノイズゲートのオン/オフなど一部の操作は、Catalyst Editを使わなくても、アンプ本体上から操作できます。
ただしボタンとノブの組み合わせなど多少複雑になります。
その他の特徴
パワーアンプ入力/エフェクトループ
プリアンプをバイパスして直接パワーアンプに入力するパワード・スピーカーとして使用できます。
手持ちのマルチエフェクター、アンプシミュレーターと組み合わせて使うとき便利です。
モードスイッチを切り替えることで、シグナルチェーンの途中に外部エフェクターを接続できる、センド・リターン端子としても使えます。
ダイレクト出力 XLR端子/グラウンドリフトスイッチ
外部のミキサーやPA機器、オーディオインターフェイスなどに直接信号を送る、XLR出力端子とグラウンドリフトスイッチを備えています。
USB B端子/オーディオインターフェイス機能
アプリケーションを使った設定の変更やファームウェアアップデートに使用するUSB Bタイプの端子を備えています。
オーディオインターフェイスとして使用する場合は、24ビット 44.1kHzまたは48kHzで4chの入力、出力に対応します。
MIDI入力端子
上位機種のCATALYST 100、200はDIN 5ピンのMIDI入力端子を備えています。
またローエンドモデルCATALYST 60はUSB端子を使ってMIDI信号を入力できます。
フットスイッチ用入力端子
別売のフットスイッチを接続できます。
アウトプットパワー調整
アンプ自体の出力を、フル、50%(ハーフ)、0.5W、ミュートの4段階から選択できます。
ミュートはレコーディングやヘッドフォン使用時用の設定です。
AUX入力
Φ3.5mmの外部入力ジャック。オーディオプレーヤーなどを接続し、CATALYSTのアンプ部を通さない音をギター音とミックスして出力できます。
ヘッドフォン端子
標準フォーンジャック仕様のヘッドフォンを接続できます。
チューナー
EFFECT用とREVERB用に加えて、タップテンポ設定用の3つのLEDを利用し、チューナーとして利用できます。
ラインナップは3モデル
アンプの最大出力によって、CATALYST 200、CATALYST 100、CATALYST 60の3モデルがあります。
機能はすべて同じですが、CATALYST 60のみは専用のMIDI入力端子がないようです。
Catalyst 60
Catalyst 100
どのモデルもスピーカーは12インチで、CATALYST200のみはスピーカーを2基搭載しています。
自宅練習や宅録用にもお奨めできそう
従来からあるSpider Vシリーズは専用アプリSpider V Remoteを使うことでアンプモデルやエフェクターをいろいろつなぎ替えられる柔軟性が特徴でしたが、その分わかりにくかったり、設定の豊富さが却って煩わしさにつながっていた面もあると思います。
その点新しいCATALYSTシリーズは基本的にアンプ側のノブだけで完結するシンプルな使い勝手で、よりギタリストに配慮したモデルといえるでしょう。
お好みのアンプやエフェクターなど実在のモデルをイメージした使い方はできなくなりましたが、好みの音を素早く作れればOKと考える実践派にはよりお奨めだと思われます。
その一方では、アプリ上で真空管アンプの動作を意識したサグやバイアスの設定が可能といった面も残っています。
さらには、ダイレクトにPAやオーディオインターフェイスへ出力できるXLR端子を備えていたり、エフェクトループやマルチエフェクターとの連携にも配慮されているなど、より実用的な志向と思われます。
ひとつ残念なのは、Spider Vシリーズよりかなり価格があがってしまったことで、初心者が最初に買えるような価格帯のモデルがありません。
0.5wまでパワーダウンできるスイッチがついていることで、これ以上低出力なモデルの登場も期待薄だと思われます。
あと、個人的なチョイスでいうと、多彩なモデリングを搭載し、なおかつルーパー対応もできるフットコントローラーまで付属して実売5万円台のフェンダー マスタング GTX100という強力なライバルがいるので、悩みどころです。