特に危険なのが、クレジットカード番号やパスワードなどを書いたメモをパソコンに保存していたばあい。
そのほか、仕事で使っていたパソコンなら顧客のリストを保存していることもあるでしょう。
こういった個人情報、顧客情報などの重要なデータを流出させることがないようにしっかり管理しないといけません。
今回は、データ抹消ソフトを使ってドライブの内容を完全に消去する方法を紹介します。
この記事の目次
なぜストレージを抹消しなきゃいけないの?
いらなくなったパソコンを廃棄したり、リサイクルに出したりする前には必ずストレージの内容を抹消しておきます。
わざわざ抹消というのは、ふつうにデータを削除しただけでは不充分だからです。
あなたがふだん行っているファイルをゴミ箱に入れる、ゴミ箱を空にするという操作は本当の意味で情報を消去しているわけではありません。
だからデータ復旧ソフトを使ってカンタンに復元できてしまいます。
パソコンを廃棄するばあいはストレージの中身を復元できないように完全消去しなければなりません。これが抹消の意味です。
抹消専用ソフトが必要なワケ
抹消という作業は、カンタンにいうとデータが書かれていた場所を別のデータで埋め尽くしてしまうことです。前にどんなデータが書かれていたかわからないようになるまで、ほかのデータを書き込みます。
このとき書き込むデータは、まったく意味のないデタラメなものか、そうでなければただのゼロです。
つまり抹消とは無意味なデータを何回も繰り返し書き込むこと。
これをハードディスクやSSDの隅から隅まで完全に行います。
だから手作業でやるのはムリだし、とても時間がかかります。
そこで必要になるのが、データ抹消ソフトやドライブ抹消ソフトと呼ばれる専用ツールです。
今回は、ターミネータ10plus データ完全抹消 BIOS/UEFI版というツールを使った作業の例を紹介します。
だいたいどんなソフトでも似たような手順になるので、参考にしてください。
メモ
抹消ソフトではハードディスクやSSDだけでなく、USBメモリやメモリカードなども抹消できます。
接続状態による作業の違い
ドライブを抹消するといっても、そのドライブがどんな状態にあるかによって作業の方法が違います。
a) Windowsが入っている起動ドライブ
b) 抹消ソフトをインストールしたドライブ
c) パソコンに増設したドライブ
d) 外付けドライブ
e) 交換や増設などですでに取り外したドライブ
なお、ここでいうドライブはハードディスクやSSDといったストレージデバイスのことを指します。
ふつうのパソコンユーザーだったら、a)とb)は同じであることが多いでしょう。
「ドライブ」の用語に注意
細かいことをいえば、ハードディスクの中を分割していくつかのドライブに分けて使うこともありますが、今回の記事ではそういった「論理ドライブ」ではなく、記憶装置そのものである「物理ドライブ」に対して処理を行うばあいの解説となります。
起動ドライブを抹消する
このうちa)やb) は、抹消ソフトに付属しているCD-ROMを使ってパソコンを起動してから作業します。ばあいによっては作業用にUSBメモリなどを作っておき、それを使ってパソコンを起動することもあります。
なぜかというと、抹消ソフトそのものやそれを動かすのに必要なWindowsが入っているドライブを抹消することはできないようになっているからです。
抹消ソフトの中にはダウンロードで配布や販売されているものがありますが、そういったソフトでは起動ドライブの抹消はできないようになっています。
増設したドライブを抹消する
デスクトップやタワー型パソコンのように、複数のドライブを搭載できるものがあります。
もともと内蔵していたCドライブにはWindowsやアプリケーションをインストール。増設したほうのドライブ(Dドライブ以降)にはその他のデータを保存しているばあいです。
このとき、抹消ソフトをCドライブにインストールすれば、Dドライブ以降のドライブはパソコンにインストールした抹消ソフトで処理するのがカンタンです。
外付けドライブを抹消する
d)とe)にあたるのがこのケースです。
USB接続ハードディスクも、交換や増設で取り外した古いドライブも、外付けドライブとして扱うので、Windowsにインストールした抹消ソフトで処理するのがいちばんカンタンです。
処理の手順としては、前項で紹介した増設したドライブと同じになります。
違うのは内蔵か外付けかという点だけです。
USB接続ハードディスクならもともと外付け用なのでUSBケーブルでカンタンに接続できます。
パソコンから取り外したむき出しのドライブ(ベアドライブといいます)を接続するには、ハードディスク用のUSB接続ケーブルが必要になります。
ハードディスク用USB接続ケーブルはドライブの抹消以外にデータのコピーやバックアップにも使えるので、ひとつ入手しておけばあとあと便利です。
ポイント
今回はもう少し多機能なUSB接続変換アダプタを使用しました。
ドライブ抹消の手順
今回は、e)のすでに取り外してあるベアドライブの抹消を例に紹介します。
ということは、抹消ソフトの使い方としてはc)やd)も基本的に同じということです。
Windowsパソコンにインストールした抹消ソフトを使っての作業になります。
抹消したいドライブを接続する
最初に、USB接続変換アダプタを使って抹消したいドライブを接続しておきます。
今回使った製品については、後日改めて別の記事で紹介します。
抹消の作業に入る前に、念のためドライブの機種名や容量をチェックしておきましょう。
複数の外付けディスクを接続しているときに間違ってドライブを選択するといったミスを防ぐためです。
今回は、以前にも紹介したSpeccyを使ってドライブを確認します。
Storage(ストレージ)という項目を開くと2台のドライブが表示されています。
外付けしたドライブは2台めとして認識されています(Seagate ST1000DM)。
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ドライブのデータを抹消
step
1抹消ソフトを起動
Windowsからターミネータ10Plusを起動します。
外付けドライブを抹消するばあいは、[ドライブのデータを抹消]を選択します。
step
2ドライブを選択
「ドライブの選択」画面が現われ、接続しているドライブのリストを表示します。
内蔵ドライブがディスク0、外付けドライブはディスク1と表示されるので、ディスク1のほうを選択します。
「抹消するドライブの選択」は「ハードディスクを選んで抹消」にします。
これで物理ドライブ(ストレージデバイスそのもの)に対して処理を行います。
ちなみに、ドライブ名の部分をクリックするとディスクビューアが起動して、ドライブの内容を表示します。
抹消後と比較するためにここで確認しておくのもいいでしょう。
step
3処理レベルの選択
次のステップでは抹消のレベルを指定します。
ターミネータ10plusではレベル1~10まで10段階あり、レベルが上になるほど念入りに処理を行うので安全性は高まる一方で、その分時間がかかります。
Wikipediaによると現在のハードディスクでは書き込み処理は1回で充分とされているようですが、心配であればレベル5の米国国家安全保障局(NSA)方式あたりを選ぶといいでしょう。
ちなみに今回はレベル8の米国国防総省(DoD5220.22M ECE)方式でやってみました。
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4処理経過
次へ進み実行開始の確認を行うと、実際に処理作業がはじまります。
今回は1TBのハードディスクに対してレベル8の処理を行ったところ、トータルで14時間近くかかりました。
もちろん、その間はパソコンを終了させないでください。
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5レポート表示
抹消作業が終わるとレポートが表示されます。
これで抹消作業は終わりです。
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6ディスクビューアで内容を確認
ドライブ選択画面に戻ったら、ディスクビューアを起動して内容を確認してみましょう。
レベル8では、ドライブ全体にゼロを書き込んでいくのでディスクの内容はすべて"00"になっているのがわかります。
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このように、ディスクの抹消は時間こそかかるものの作業そのものはカンタンです。
古いパソコンを廃棄したり、リサイクルや下取りで手放す前には必ず抹消を行い、あなたのだいじな個人情報やお客様のデータが他人に漏れることのないように心がけてください。
抹消ソフトはだいたい3000円~5000円程度、今回接続に使用したUSB接続変換アダプタも3500円程度で手に入りますから、ぜひ揃えておきましょう。