その分設定の組み合わせが多いので取扱説明書を参考に、自分が使う可能性がありそうなパターンを整理してみました。
この記事の目次
4Chでクリアなオーディオ収録
XF400の機能で特に魅力を感じたのが4ch録音が可能という点でした。
ステージの撮影では内蔵マイクだろうと外部マイクだろうと、カメラの位置で録音する限りは、会場全体で反響した音を拾うことになります。
これでは演者のセリフやプレゼンターの声はクリアに録れません。
残響を押えてクリアに録音するひけつはなんといっても音源に近いところにマイクを設置することです。
しかし、その場合ステージ上の音がクリアになる一方で、観客のざわめきや歓声、拍手といったアンビエント(環境)音がほとんど記録されないので臨場感が出ません。
そこでステージ側にマイク2本、さらに会場内にもマイク2本を設置して4チャンネルで収録すれば、セリフや演奏と会場内の観客のようす、どちらもクリアに収録できます。
このばあい、ミキシングコンソールを通してミックスダウンした音を録音するという方法もありますが、機材セッティングの手間がかかるし、もしミックスの段階で失敗したらあとから修正はできません。
しかしビデオカメラ側で4ch録音ができれば、機材セッティングがカンタンになるだけでなく、編集時にステージと会場の音量バランスをカンタンに調整できます。
XF400のオーディオ入力設定パターンは14種
XF400/XF405の取扱説明書(94ページ)によると、4ch録音のばあい音声関係の入力設定は14パターンにも登ります。
これは、内蔵マイク、XLR端子によるマイク/Line入力、ステレオミニジャックの3系統の入力を4つのチャンネルにどのように振り分けるかを選べるからです。
表を見ただけでは分かりづらいので、使いたいシチュエーションと機材がどれに当たるのかチェックしておきます。
上の図で1~3の数字をふったところが、使う可能性があると感じた組み合わせです。
なお、いちばん下のふたつは付属品のハンドルを装着しない場合です。
ハンドルを装着しない場合、XLR端子からの入力ができないので、組み合わせは非常にシンプルになります。
AACとリニアPCM
XF400/405で2chと4chを使い分けるばあい、オーディオの記録形式に注意が必要です。
- 2ch収録のフォーマット >> 16bit AAC 48KHz
- 4ch収録のフォーマット >> 16bit リニアPCM 48KHz
このように4Ch収録では自動的にリニアPCMになります。
逆にいうとリニアPCMで記録したければ4ch録音にする必要があります。
INPUT端子とMIC端子の使い分け
取り扱い説明書を読んで設定を理解する前に、基本的な用語を知っておきましょう。
取扱説明書によると音声入力にはINPUT端子とMIC端子、そして内蔵マイクの3つがあります。
業務用カメラに不慣れな方はINPUT端子とMIC端子の違いをまず理解してください。
INPUT端子はXLR(キャノン)端子のこと
付属ハンドルを装着するとXLR端子、通称キャノン端子によるオーディオ入力が可能です。
XLR端子にはコンデンサーマイクのほかに、ミキサーなどからのLINE入力も可能です。
つまりマイクを直接つなぐだけではなく、いろんなオーディオ信号の入力に使えるのでINPUT端子という名称になっているものと思われます。
INPUT端子はINPUT1とINPUT2の2系統があります。
MIC端子はステレオミニジャック
MIC端子はXF400/405のカメラ本体についているステレオミニジャックで、Φ3.5mmのステレオミニプラグを接続します。
ステレオミニプラグによるLINE入力もできるはずですが、基本的にはステレオミニプラグのマイクロホン用です。
入力の切り替えと設定
ハンドルにあるスイッチ類では、オーディオチャンネル1(ch1)とチャンネル2(ch2)に対してどの信号を送るかを選べます。
チャンネル3(Ch3)とチャンネル4(ch4)については、液晶モニタ上の設定画面で行います。
このチャンネルとマイク/LINEの組み合わせパターンが多いことが、設定をわかりにくくしています。
ハンドルで設定できるch1とch2に絞って、かんたんにまとめると次のようになります
チャンネル1への入力
- INPUT1をつかうのか、それとも内蔵マイクまたはMIC端子を使うのか
- INPUT1を使う場合、LINE入力かマイクか、またマイクはファンタム電源か
- ch1の音量設定はマニュアルかオートか
チャンネル2への入力
- INPUT2をつかうのか、それとも内蔵マイクまたはMIC端子を使うのか
- INPUT2を使う場合、LINE入力かマイクか、またマイクはファンタム電源か
- ch2の音量設定はマニュアルかオートか
INPUT1はCh1、INPUT2はCh2
これでわかるように基本的には、INPUT1はch1に、INPUT2はch2に入力されます。
INPUT1をch2に記録することはできません。
ただし例外設定としてch2にINPUT1を録音することはできます。
この場合、ch1とch2の両方にINPUT1が記録されるので、万一ch1にトラブルがあった場合、バックアップとしてch2を使うといったことができます。
ch2にINPUT1、2のどちらを割り当てるかは設定画面で指定します。ハンドルでは設定できません。
ch3とch4
ch3とch4には、INPUT1/2を割り当てるか、カメラ内蔵マイクまたはMIC端子を割り当てるか、のどちらかを選べます。
これらの組み合わせにより上の図で紹介した14パターンの組み合わせが可能になります。
4chで実際に使いそうな組み合わせは3つ
上の図を見ながら、実際に使いそうな組み合わせを調べました。
このほかにも組み合わせはありますが、シンプルに2chで録った方がよさそうなので、省きます。
1. XLRモノ入力+内蔵マイク
ビデオカメラにモノラルのコンデンサーマイクをセットしてXLR端子で接続します。
ニュースやロケの収録でよくあるパターンです。
- ハンドルの入力切り替え ch1はINPUT1、ch2はINPUT2側に
- メニュー設定 ch2をINPUT1に、ch3/ch4はINT MIC/MIC側に
この設定ではch1はINPUT1からXLR接続コンデンサーマイクのモノを収録し、ch2にも同じモノを収録します(デュアルモノ)。このばあいch2はch1のバックアップ扱いです。
ch3/ch4は内蔵マイクによるステレオ収録です。
つまり4ch設定を行いますが実質的には3chです。
ニュース取材などでは最初から2ch設定(のモノラルマイク)で収録するほうが手軽ですが、アンビエント(環境)音も録っておきたいと考えるなら、この設定もありかと思います。
2. XLR入力2系統+内蔵マイク
XLR端子と内蔵マイクによる4ch入力です。
XLR端子で接続するマイクはステレオ配置や、司会者とパネラーのモノ2系統、楽器とボーカルなどいろんな組み合わせが可能。
さらに内蔵マイクで観客の声などホール内の環境音を録ることができます。
ステージ上の音をクリアに録りつつ、会場のアンビエント(環境)音もいちおう収録しておきたいという手軽な利用法になります。
- ハンドルの入力切り替え ch1はINPUT1、ch2はINPUT2
- メニュー設定 ch2の設定をINPUT2、ch3/ch4はINT MIC/MIC
注意ポイント なお、最初にふれたようにリニアPCMで録音する場合は4ch収録にしなければなりません。 音源は2chしか必要ないけれどリニアPCMで録りたいときは、この設定にしておいて編集時にソフト上でch1とch2を残し、ch3とch4はミュートするかトラックごと削除してしまうといいでしょう。
3. XLR入力2系統+ステレオミニ入力
XLR端子とステレオミニジャックによる4Ch入力。
3.をベースに内蔵マイクではなく外部ステレオマイクを接続します。
会場内に立てたマイクをミキシングコンソール経由でステレオミニジャックに入力するという使い方で、音響設備がしっかりしている会場向きです。
- ハンドルの入力切り替え ch1はINPUT1、ch2はINPUT2
- メニュー設定 ch2はINPUT2、ch3/4はINT MIC/MIC
設定そのものは3.と同じですが、実際に外部マイク/LINE入力をつないでいるかどうかの違いになります。
Ch3/Ch4の入力と音量設定
ch1とch2の音量設定はオートとマニュアルの切り替え、マニュアル時の音量設定をハンドル上のスイッチとダイヤルで操作します。
それに対し、ch3とch4の音量は設定画面のメニューで操作します。
アッテネーター/ローカットフィルター
INPUT、MIC、内蔵マイクのすべてで、アッテネーターとローカットフィルタを指定できます。
アッテネーターであらかじめ入力信号を小さくしておくことでより細かい音量調整ができます。アッテネーターは20dBです。
ローカットフィルターは風の音など低い周波数の音をカットして聞きやすくします。
アッテネーター/ローカットフィルターともに設定メニューで指定を行います。
4Ch収録のアドバンテージを活かせ
これで4ch収録する場合の設定がわかりやすくなりました。
手持ちで舞台裏のようすなどを記録する場合は1.のXLRモノ+内蔵ステレオ、ホールで本格的に4ch収録するなら、3.のXLR2系統+ステレオミニジャックMIC入力、ステージだけ重視なら2.のXLR2系統+内蔵マイクでカンタンに済ませます。
その他の組み合わせは、今回想定している用途では不要でしょう。むしろ最初から2ch収録でシンプルに済ませようと思います。
XF400/405の4ch収録は同クラスの他のモデルにはない、強力なメリットです。
ステージ撮影では最初からコンソールでミックスした音源を2chでもらうこともできますが、それだと編集上でのバランス調整ができません。
その点カメラ側で4ch録音できるなら編集で自由自在にいじれます。
演劇に限らず、コンサートや講演会の収録ならこのメリットを見逃す手はありません。