アンプシミュレーターの設定を変えたり、エフェクターを追加したりと試行錯誤してみましたがなかなか満足できませんでした。
その後VOXのValvenergy SILK Driveという単体のアンプシミュレーター/オーバードライブペダルを買ったことで少し改善されましたが、ギターアンプを鳴らしたときのふくよかな音とはどこか違いがあります。
そこで以前に5万円台(以下)で買えるギターアンプから気になるモノを記事にまとめました。
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Syncroomにも活かせるギターアンプ候補
自宅でしっかり練習できて、しかもPCでのレコーディングやライブ配信にも使いやすいという点に注目して5万円台以下のギターアンプをセレクトしてみました。 せっかくデータをまとめたので、記事で公開します。よ ...
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ところがこれらを押しのけ、蹴散らすほどの有力候補が登場してきました。
FenderのToneMaster Princeton Reverbです。
5万円台どころか10万円を越えるんですが、調べてみたらなんとパソコンとの親和性もありSyncroomでも使いやすそうです。
国内発売はまだですが、すでに海外のレビュアーからはサウンドデモが公開されています。
この記事の目次
あこがれの名器を本家がデジタル化
フェンダーのToneMasterシリーズは、往年の・・・どころか現在も定番として評価を確立しているギターアンプをデジタル技術でリメイクしたものです。
元は真空管アンプですが、それをデジタル化することで、さまざまなメリットを手に入れました。
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大幅な軽量化(持ち運びが簡単)
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取り扱いの簡便化(スタンバイ時間なし、メンテナンスがほぼ不要)
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出力を5段階から選べるパワーコントロール機能(小音量でもギターアンプらしい音)
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IR対応のライン出力(PA出力やPCへの録音が簡単)
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USBポート搭載(ファームウェアアップデート)
これまでTwin Reverb、Deluxe Reverb、Super Reverbの3機種がラインナップされ、どれもオリジナルの真空管アンプそっくりの音と操作感でかなり高い評価を得ています。
基本的な操作方法だけでなく、ダイヤルをいじってセッティングを変えたときの反応までオリジナルモデルを忠実に再現しているので、本物を知っているプレイヤーにとっても違和感なく使えるそうです。
モデリングアンプなのに対応するモデルは一機種だけ、エフェクター類も搭載していません(オリジナル機にあったリバーブ/トレモロの再現のみ)。
その代わり、すべてのDSPパワーをルーツモデルの再現に注ぎ込んでいます。
一方、使い勝手の点ではデジタルの利点を活かしたモダンなものになっている(やや寄せている)ので、DTMの機材としての親和性もちょっとだけあるというのがミソでしょう。
パソコンユーザー視点で見たFender ToneMasterシリーズのメリット
- 真空管アンプ独特の操作手順やメンテナンスとは無縁
- キャビネットシミュレーターを通った音をPCに送れるLineOut端子(ダイレクトレコーディングに使える)
- ラインアウトのレベル調整が可能
- キャビネットシミュレーターはオフにもできる(手持ちのIRローダーを使える)
- Muteスイッチでスピーカー出力を切れる(ハウリングの心配がなく、Syncroomに好適)
- ファームウェアアップデートに対応(ただし機能アップは物理的に不可)
ToneMasterシリーズのここに注意
- ヘッドフォン端子がない(オリジナルモデル同様の仕様)
- マスターボリュームがない(オリジナルモデル同様の仕様)/パワーコントロールスイッチが背面
- センド/リターン端子などはなから付ける気はない
- アプリによるカスタマイズなどは想定外
- デジタルアンプにしては高価
上記のようなポイントが気になるようだったら、同じフェンダー社のマスタングGTXシリーズやLine6のCatalystシリーズなどを選んでおくのが無難です。
小型アンプの傑作がToneMasterシリーズに
そのToneMasterシリーズに、この夏新たにPrinceton Reverbが加わりました。
これまでのToneMaster シリーズにならって外観はオリジナルモデルそっくり。右下にある”ToneMaster”のプレートがなければ違いがわかりません。
Princeton Reverbは出力12Wの小型アンプで、自宅練習や小さなスペースでの演奏向きとされていますが、その一方ではレコーディングにも数え切れないほど使われてきた実績があるようです。
自宅練習にぴったりのパワーコントロール
12Wといっても真空管アンプではかなりの音量が出るところですが、デジタル化されたToneMaster Princeton Reverbのばあい、12W(フルパワー)のほかに、6W、3W、1.5W、0.75W、0.3Wの5段階を切り替え可能。
これならご近所に迷惑を掛けることなく練習できそうです。
ギターアンプの場合、ボリュームを絞り過ぎると音に迫力がなくなり、上げすぎると歪みすぎるなどなにかと気を遣います。
ToneMasterシリーズにラインナップしているモデルはどれもマスターボリュームがないので、オリジナルモデルだととても自宅での練習どころではなかったと思われます。
ところがToneMasterシリーズではパワーコントロール機能がついたことで小音量でも迫力のあるギターサウンドを楽しめそうですね。
これぞデジタル化の恩恵。
パワーコントロールのスイッチは背面パネルの中央やや右寄りにあります。
ヘッドフォン端子はないけれど・・・
Twin ReverbやDeluxe Reverbといった名器たちが自宅で使いにくいもうひとつの理由は、ヘッドフォンが使えないことですね。
ToneMasterシリーズも操作系をほぼ忠実に再現しているのでヘッドフォンジャックがありません。
というわけでこれまで見落としていたんですが、実はそれに代わる方法があるのに今回気づきました。
オリジナルモデルにはなかったToneMasterならでは機能のひとつがLine Out端子の搭載です。
バランス出力対応のXLR端子なのでPA出力をおもに想定しているんでしょうが、これを使ってパソコンに取り込むことができます。
ということは、USBオーディオインターフェイスのヘッドフォン端子を使ってモニター可能なはずです。
ダイレクトモニター機能があるオーディオインターフェイスだったらアナログ/デジタル変換する前の音を聴けるのでレイテンシー(変換に伴う遅れ)は気にしなくてよさそうですね。
また、このラインアウトにはキャビネットシミュレーターも搭載されています。キャビネットシミュレーターは2種類で、さらにオフにすることもできます。
LineOut端子を備えているアンプはほかにももちろんありますが、キャビネットシミュレーターについて述べられている機種はあまり見かけません。
本来キャビネット(スピーカー)から出る音をPCで録音/配信したいわけですから、LineOut信号はキャビネットシミュレーターを通っていてほしいわけですが、そこのところがはっきりしない機種が多い。
その点ToneMasterシリーズはキャビネットシミュレーターをユーザーが選べるのは嬉しい限りです。
もしLineOut信号の音が気に入らなかったら、別にキャビネットシミュレーターを用意してそちらを通した音を使うというのも考えられます。
LineOut信号で録音/モニターするときは、アンプ側のMuteスイッチをオンにすればアンプ本体からは音が出ません。
つまり、Syncroomでのプレイ時にもボーカルマイクが音を拾ってハウリングを起こす心配はありません。
とにかく国内発売が待ち遠しい
というわけで、フェンダーのToneMasterシリーズは単に名ギターアンプをデジタル化で扱いやすくしただけでなく、PCでのレコーディングやライブ配信、そしてもちろんSyncroomにも使いやすそうな仕様になっていることに今更ながら気がつきました。
もちろん、同クラスのギターアンプに比べると高価なのは否めません。
たとえばRolandのBlues Cub Hotに比べるとToneMaster Princeton Reverbの価格はほぼ2倍です。
それでもあこがれのフェンダーアンプを所有してみたい、しかもめんどうな真空管アンプの儀式やメンテナンスの手間は不要、と考えるとかなりそそられますね。
Princeton Reverbなら、Twin ReverbやDeluxe Reverbより、多少なりとも安価ですし。
本格的なギターアンプを探しているけど、ライブ配信やPCとの親和性もだいじにしたいという皆さん、選択肢のひとつとして候補に入れてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、ToneMaster Princeton Reverbが日本に出回るのは2023年になってからのようです。
フェンダー ToneMaster Princeton Reverb公式ページ