キーボードは、長時間入力作業するライターやプログラマーにはとても重要なパーツです。
感触が悪いキーボードだと入力ミスが増えたり、考えながら入力するときリズムが乗らなかったりで、作業の効率まで落ちてしまいます。
今回はそんなキーボードについて考えてみました。
この記事の目次
急にキーボードが気になったワケは?
先日、交換用のSSDを買いにパソコンショップへ行きました。
店員の数が少なく、1人がずっと接客中だったので、しかたなく時間つぶしにいろんなパーツを見ていて、キーボードのコーナーでなにげなくゲーミングキーボード(ゲーム用)に触ったらかなり感触がよくて気に入ったので、キーボードについて調べてみました。
いつの間にか増えていたメカニカル式キーボード
キーボードは構造によってだいたい次の3つのタイプに分かれます。
- メンブレン式
- パンタグラフ式
- メカニカル式
ほんとうはもっと細かいし、この分類も細かく定義していくとちょっと違うんですが、一般的にわかりやすい話ということで進めます。
今回パソコンショップで触って気に入ったのは3つめのメカニカル式。
名前でだいたい想像つくと思いますが、メカニカル式キーボードは機械式。電気的なスイッチのほかに金属のバネがキーの一個一個に入っていて、キーを押したときに沈み込む感じと反発で押し戻す感じのバランスがいいので、気持ちよく入力できます。
昔はこのメカニカルタイプのキーボードしかなかったので、私もこのタッチに慣れていたんですが、最近は間に合わせで買ったパンタグラフ式のものを使っていました。
メカニカル式キーボードはとにかく気持ちいい
メカニカル式キーボードの特徴はなんといってもタイプしていて気持ちいいところ。
文字を打ち込むために必要なキーの沈む深さ(ストローク)とその時の感触が指の動きにマッチしていてスムーズに入力できます。
キーを打つときの重さ(反発力)は製品によっていろいろですが、反発力も含めた操作感覚は、ほかの形式のキーボードに比べてとにかく気持ちがいい。
すっと沈み込む感じが気持ちいいし、全部押し込まなくてもいいから速い入力が可能、疲労感も少ないんです。これがタッチの悪いキーボードだと、全部押し込まないと入力できないし、そうなると底突き感があって感触が悪くなります。
そのほかにも、メカニカル式には頑丈で壊れにくい、タイプするときのカチャカチャいう音が大きめで入力するときの気分を盛り上げてくれるといった特徴があります。
要するに仕事をしていて乗ってくるんです!
パソコン本体のおまけでついてくるようなペタペタでストロークが浅くて、底突き感のあるキーボードとはぜんぜん違うということだけは知っておいてください。
欠点は音と大きさで使う場所を選ぶこと
もちろん欠点もあります。
タイプ音が大きめなので、人や場所によってはうるさく感じます。
特にカフェや図書館のような静かな場所ではうるさすぎ使えませんが、実のところこれはあまり心配ありません。
というのもメカニカルキーボードはどうしてもサイズが大きくなってしまうので、ノートパソコンではもともと使われていないからです。
ただし、タイプ音については、最近では静粛性に配慮した製品も出ているようです。
そのほかには、部品点数が多いのでほかの形式のキーボードに比べると価格が高いのも欠点といえばいえます。
最近のメカニカルキーボード事情
急に目立ちはじめたのはゲーミングPCのおかげ?
一時期パソコンショップでも、メカニカル式キーボードは姿を消していたように思います。もっともこれは、私が住んでいるのがけっこう田舎だからかもしれません。
今使っているパンタグラフ式キーボードも、故障したキーボードの代わりに間に合わせで買うときに手頃な価格でなるべくタッチがいいものを探したんですが、あまりイイ感触のものがありませんでした。
それがなぜ今になってメカニカル式?と思って調べてみたら、どうやらゲーミングキーボードとして注目されたのが原因。つまり激しい使い方をするゲーミング用キーボードは、壊れにくいメカニカル式が適しているというのがポイントのようです。
理由はどうであれ店頭で試して選べるなら、次に買うのはメカニカル式キーボードにしようかなと思ったので、ほかにどんな製品があるのか家に帰ってさっそく調べることにしました。
タイプが多すぎて選べない!
ところが、いざチェックしはじめたらとてもたいへんなことが発覚!
スイッチだけでも4種類ぐらいあって、それぞれ特徴が違います。
そのほかにもアクチュエーションポイント、押下圧、ストロークなど細かい情報が書かれている製品もあってとても簡単には選べません。
ゲーマーは凝り性な人が多いのか、勝負がかかったシビアな世界だからなのか、とても昔では考えられなかった情報量です。
そこで、まずなるべく整理してみましょう。
メカニカルキーボードのスイッチはこんなにある
調べてみたところ、メカニカルキーボードで使われるスイッチには数タイプあることがわかりました。
通称、青軸/赤軸/茶軸/黒軸 などと呼ばれるタイプです。これらはすべてCherry社(現在はZF Electoronics)製のCherry MXと呼ばれるシリーズで、タイプしたときの感触(クリック感)やタイプ音の大きさなどで分けられます。
青軸(クリッキー型)
クリック感がいちばん強く、キーを押すのに必要な力(押下圧)も大きいタイプです。タイプ音もいちばん大きくなります。
タイピングに少し力が必要で音やタッチの感触がしっかり返ってくるようです。
クリック感を生むタクタイルポイントで急に重くなったあと、すとんと重さが減って接点(オペレーティングポイント/アクチュエーションポイント)を通過します。タクタイルポイントとフルストロークしたときの重さがほぼ同じです。
タイピングスピードは多少遅くても正確な入力を求める人向きです。
赤軸(リニア型)
クリック感がいちばん少なく、押下圧が低いタイプ。音も静かです。ただし、後ほど紹介する動画では押し上げ圧が「やや重い」に分類されています。
キーストローク中の重さの変化が直線的に増えていきます。このためリニアと呼ばれるようです。
ゲーム用としては入力スピードを重視する人向けとされています。
茶軸(タクタイル型)
クリッキーとリニアの中間型ですべてほどほどのタイプ。クセがないので、初めてメカニカルキーボードを買う人にお薦めのようです。
ストロークの途中に急に重くなるピークがあってこのタクタイルポイントがクリック感を生みます。そのあといちど軽くなってからオペレーティングポイント(アクチュエーションポイント)を通過するときにスイッチが入ります。あとはフルストロークまで直線的に重くなります。ただし青軸と違って、タクタイルポイントよりフルストロークポイントのほうがやや重くなるセッティングです。
ゲーム用としてはスピードよりも正確性を重視する人向けとされています。
タクタイルは触覚という意味です
黒軸(リニア型)
赤軸よりタッチが重くストローク感を持たせたタイプ。音は控えめ。
重さは赤軸同様にリニアに変化するのでタクタイルポイントはありません。押しはじめの重さは赤軸と同じくらいですが、フルストローク時は赤軸/青軸より20cN重くなります。
実は、いちばん古くから存在しているタイプらしいです。
Cherry MXの歴史がわかる記事各タイプの細かいスペックやタイプは下記のページでご覧いただけます。ただし黒軸については載っていません。
メカニカルキーのスイッチの違いについてその他のスイッチ
上記4つのほかに、Cherry MX Speedという高速入力対応のスイッチもありますが、しばらくはCorsair社製品への独占供給だったようで、一般的にはあまり使われていないようです。
ほかにもMX SILENTやMX LowProfile赤軸といったバリエーションがあります。
Filcoメカニカルキーボードに採用されるCherry MXスイッチとは
ゲーム用としてはしっかりした入力感のある青軸が一般に好まれるようですが、私のばあい原稿書きなどのタイピング用途なので、上の資料を見る限り適度にクリック感やストローク感があって静かな黒軸がいいかなと思いました。
ただし、昔ながらのカチャカチャしたタイプ音にも慣れているので、茶軸もいいかもしれません。
ロジクール(ロジテック)社は独自のスイッチを使用
パソコン用周辺機器で有名なロジクール(ロジテック社の日本向けブランド)製品の多くは、ロジテックと日本のオムロン(オムロンスイッチアンドデバイス)で共同開発したRomer-Gというスイッチを使っています。
Cherry MXシリーズは30年近く前からある製品ですが、Romer-Gはゲーム用を重視して開発された新しい製品です。Romer-Gを使ったキーボードは2015年ごろに登場しています。
ゲーム用を意識しているだけあって、Cherry MXの耐久性テストが5000万回なのに対し、Romer-Gは7000万回をクリアしています。
Romer-Gにも、Cherry MXと同じように、リニア/タクタイルの2タイプがあります。
さらにクリッキーに相当するGX青軸というのもあります。
Romer-Gは構造上青軸タイプは難しいとされていて、リニアとタクタイルの2タイプしかありませんでした。しかし、中国のKailhというブランドが開発したスイッチを採用することでクリッキータイプが追加されました。
これがGX青軸で、メーカーが異なるためかRomer-Gとは別ブランドになっています。
ロジクールのスイッチについては下記のページで解説されています。
Romer-GとGX青軸の特徴
GX青軸の特徴や登場のいきさつについては、下記のページに詳しく紹介されています。
GX青軸搭載キーボードのレビュー
ロジクール製ゲーミングキーボードでは、G512というモデルで3つのスイッチタイプを選ぶことができます。
G512-●●の部分がLNの場合リニアタイプ、TCならタクタイル、CKがクリッキータイプです。
G512K以外のキーボードでは単にRomer-Gとなっているものがありますが、リニアやGX青軸が登場する前のモデルで、現在の分類に従うとRomer-G Tactile(タクタイル)になります。
Romer-G(無印)がRomer-G Linearの登場でRomer-G Tactileに名前を変え、さらにGX青軸が追加されたという流れです。
その他メーカーのスイッチ
Cherry MXシリーズはすでに特許が切れているため同じようなスイッチを使ったキーボードが発売されているようです。これらの製品も、青、赤、茶といった区別をCherry MXに倣っているので、スイッチ全体としても青軸系/赤軸系/茶軸系と一般的に呼ばれています。
押下げ圧と押上げ圧
ユーザーによるレビューを見ると、だいたい青軸はキーが重いと書かれていますが、中には軽いと書いているものもあります。同様に赤軸は軽いと書いているものが多い中でたまに重いと書かれていることがあり、矛盾した2タイプのインプレッションが混在しているようです。
はっきりした理由はわかりませんが、かなりの数のWeb記事や動画を見た感じでは、押下げ圧と押上げ圧の記述が明確にならないまま感覚的なレビューが一人歩きしているように思います。
次の動画は、メカニカルキーボードを発売しているセンチュリーのものですが、動画のサムネイルでは押し上げ圧を基準にして青軸がいちばん軽いと説明されています。
一方、動画内での各軸の違いでは押し下げ圧について説明しています。
押下げはじめる瞬間の重さについて感じているのか、ストロークした後反発で戻ってくるときの力のことなのか、個人のレビューではあいまいなことが多いようなので注意してください。
おすすめキーボードを探せ
以上がわかったところで、だいたい選び方の基準が見えてきたので、パソコン周辺機器ではおなじみの主要メーカーのキーボードを調べてみました。
ロジクール
ロジクール製品はLogicool Gというゲーム用シリーズでメカニカルキーボードを採用しています(メカニカル以外にメンブレンタイプのゲーム用キーボードもあります)。
ゲーム用にはいろいろな特徴があり、たとえばキートップがカラフルに発光したりしますが私の場合そんな機能は不要なので、なるべくシンプルなものを探します。
現行モデルは次のようになります。下になるほど高価になります。
G413(Romer-Gタクタイル)
Romer-Gタクタイルスイッチを使ったゲーム用キーボードのベーシックモデル。アルミ合金製のカバー、USBパススルー機能、ファンクションキーのカスタマイズ、タイプした文字を確実に入力できる26キーロールオーバー、ゲームにじゃまなキーを一時的に無効化できるゲームモード、音量調整などが簡単にできるメディアコントロールなど、ロジクール製ゲーミングキーボードの基本的な特徴をしっかり押えています。
リニアタイプ
G610(Cherry MX 青軸)
GX青軸が登場する前のモデル。Romer-Gでは青軸系のタッチが実現できないため、Cherry MXの青軸を使っていたようです。青軸なのでしっかりしたタッチでしょう。
G512(3タイプ)
Romer-Gのリニア/タクタイルとGX青軸の3タイプが選べるモデル。現在の主流モデルのようです。
リニアタイプ
タクタイルタイプ
クリッキータイプ
G613(Romer-G)
G610のスイッチをRomer-Gに替えて、さらにワイヤレスにしたモデルでしょうか。LightSpeedとBluetoothのふたつの無線タイプに対応しています。
G810RGB(Romer-G)
1680万色のカラー表示、スマートフォン/タブレット対応でカスタマイズができるArxコントロール、BGMや動画再生などの操作ができるメディアコントロールなどの機能を備えた上位モデル。
G910r(Romer-G)
手のひらを載せてタイピングを楽にするパームレストや6個のプログラマブルボタン
を備えた最上位モデル。
さらに調べたら、ゲーム用以外にもメカニカルキーボードがありました!
K840 (Romer-G)
Romer-Gを採用した一般用のシンプルなキーボード。3段階に角度を変えられて滑りにくいラバーコートの脚など実用性重視のモデルです。
Amazonでもおおむね高評価。私の用途だとLogicool製品なら第一候補かな、という感じです。
サンワサプライ
周辺機器ではおなじみのサンワサプライも、いくつかメカニカルキーボードを出しています。
SKB-MK2BK(Cherry MX黒軸)
黒軸スイッチを使ったスタンダードなキーボード。商品写真で見た限り、打鍵が強くなりがちなメカニカルキーボードにしては少し脚が貧弱化かもという気もします。実売価格が大幅に下がっているのも魅力。
そのほかにサンワダイレクト専売モデルがあります。
400-SKB056R/SKB056BL (フルキーボード)
赤軸(R)、青軸(BL)2タイプが選べるテンキー付きのフルサイズモデル。同じCherry MX使用の他社製品より1mm浅い約3mmのストローク、ゲーミングキーボードならではの華やかな光を演出するLEDバックライトなどが特徴です。
400-SKB057R/SKB057BL (テンキーレス)
赤軸(R)、青軸(BL)2タイプが選べるテンキーレスモデル。同じCherry MX使用の他社製品より1mm浅い約3mmのストローク、ゲーミングキーボードならではの華やかな光を演出するLEDバックライトなどが特徴です。
エレコム
サンワサプライと並ぶ周辺機器メーカーの大手エレコムですが、意外にメカニカルキーボードはわずかです。
TK-G01UKBK
4mmストローク、キートップを交換可能なゲーミングキーキャップと取り外し用のツールなどが付属したゲーム用キーボード。テンキーレスモデル。
オウルテック
パソコンに詳しい人ならオウルテックもおなじみでしょう。
OWL-KB109C (3タイプ)
Cherry MX使用、青軸/赤軸/茶軸が選べるフルサイズ109キーボード。ファンクションキーの左に、再生/停止、ミュート、音量調整などを行うマルチメディアキーを搭載。長時間入力時に手の疲労を防ぐパームレストが付属しています。PS/2コネクタ接続に接続している場合は、Nキーロールオーバーに対応し複数のキーを同時に押しても入力漏れがありません。USB接続でも6キーまで同時入力できます。
OWL-KB92BLJP-BK (青軸、テンキーレス)
kailh社製青軸スイッチを使用した92キーのテンキーレスコンパクトモデル。スチール製シャーシによる高剛性、1.8mの着脱式USBケーブル、ゲーム中にWindowsキーを無効化するゲーミングモードを搭載。Nキーロールオーバーにより、初期設定では6キーまで同時入力対応。設定変更で全キーの同時押しにも対応します。
OWL-KB109BLJP (青軸、フルサイズ)
kailh社製青軸スイッチを使用したフルサイズ109キーボードです。ファンクションキーの左に、再生/停止、ミュート、音量調整などを行うマルチメディアキーを搭載。長時間入力時に手の疲労を防ぐパームレストが付属しています。PS/2コネクタ接続に接続している場合は、Nキーロールオーバーに対応し複数のキーを同時に押しても入力漏れがありません。USB接続でも6キーまで同時入力できます。
OWL-KB109CBL (青軸)
Cherry MX青軸使用。ブルーLED内蔵でキートップが光ります。
Filco
田舎のパソコンショップだとまず見かけることはないと思いますが、実はキーボードにこだわる人に人気が高いのがFilco(フィルコ)の製品です。
これについては機会を改めて詳しく紹介したいと思います。 この数日、田舎に引きこもってることの悲哀をひしひしと感じているFukuzumiです。 その理由は仕事に欠かせない、いや要といってもいいキーボードの情報を見逃していたこと。高品質なキーボードといえば東プ ... 続きを見る
定番のFILCO Majestouchってどんなキーボード?
自分にあったメカニカルキーボードを探そう
以上、メカニカルキーボードの主な特徴、スイッチによる操作感や音の違いをもとに、主要メーカーの現行製品(2019年5月現在)をピックアップしてみました。
特徴をもういちどまとめます。
- メカニカルキーボードの主流は耐久性などを重視するゲーム用
- ゲーム用はLEDによる演出やマルチメディア再生など機能が豊富
- 青軸/赤軸/茶軸/黒軸でキーのタッチや音に違いがある
- ロジクールは独自のRomer-GとGX青軸を採用
まずは青軸/赤軸/茶軸の特徴を押えて、好みにあったキーボードを探してみましょう。
そこからさらにテンキーあり/テンキーレス、有線/無線、シャーシやカバーの材質などで絞り込んでいくといいでしょう。
キーボード選びのポイントは、スイッチのほかにもいろいろあるんですが、スイッチ関係だけでもかなり情報量が多かったので、今回はメカニカルキーボードのスイッチだけにフォーカスして紹介しました。
周辺機器大手メーカーのみに絞って紹介したのは、店頭で触れる機会が多いからです。まずキータッチを実感してからそこを基準にネットのレビューなども考慮して、自分好みのキーボードを探してください。
メカニカルキーボードは比較的高価だし、キータッチや音質、音の大きさなどにかなり好みがでます。いきなりネット通販で注文するのではなく、まず店頭で実際に触って自分なりの評価基準を決めるようにしましょう。
ほかのポイントについては、機会があったらまた改めてとりあげたいと思います。