周辺機器

4K動画の高画質撮影に必要なSDカードを調べてみた

知り合いに頼まれて、ビデオ撮影用機材の選定をやることになりました。

ところがメモリカードの規格というか、書き込みスピードの区分が複雑すぎてよくわかりません。そこで、現在どんな規格があってどんなものを選べばいいのか再確認しました。

ステージイベントを高画質収録したい

今回頼まれたのは、私が住んでいる自治体の文化事業に関わる団体です。

カンタンにいうとイベント関連のステージ撮影なんですが、単なる広報というより事業としての記録という面が強く、またある程度よい機材を揃えたいという意向だったので、4Kで高画質収録できるプランを提案することにしました。

実は以前にも、私物のFHD(フルハイビジョン)カムコーダーを使って撮影をお手伝いしています。

しかし機能に制限があってなかなか思うような映像を残せませんでした。

そこで先方担当者に「できたら業務用ビデオカメラが欲しいところですね」とグチをこぼしたら、なんと「予算を確保するから機材を選んでほしい」と、望外の返事。

これはチャンス! 

撮影~編集もどうせ私が請け負うんだから、と今のわたしではとても手が出ない機材をピックアップすることにしました。

どんな機材を選んだかは、また後日あらためて紹介します。

記録メディアの選び方

Webで情報を仕入れてひととおりの機材を選んだわけですが、最後に悩んだのが記録メディアです。

4K撮影では、一般的にSDカードスピードクラス10UHSスピードクラス1ぐらいのスペックが必要とされていて、自分用でも、これまでそこをめやすに買ってきました。

しかし、今回の機材選定ではさらに上の画質を狙えるし、予算にもかなり余裕があります。

そこで4Kで高画質撮影するために必要なSDカードのスペックを調べてみました。

スピードクラスは大きく3種類

SDカードには容量以外にスピードクラスという分類があります。

デジカメで1~2枚スナップを撮るくらいなら高速のものはいりませんが、スポーツや野鳥、航空機の写真などで大量に連写するときは高速のカードが必要です。

4K動画になるとさらに高速のカードが必要になります。

現在スピードクラスには次の3つがあります。

  • SDインターフェイス対応

  • UHSインターフェイス対応

  • ビデオスピードクラス 対応

また、UHSにはクラス1とクラス3があって、それぞれ最低転送速度が10MB/s、30MB/sとなります。

ビデオスピードクラスにはV10、V30、V60などがあり、最低転送速度はそれぞれ10MB/s、30MB/s、60MB/sです。

つまりスピードクラスの数字がそのまま最低転送速度を表していると考えればOK。

下の表はフラッシュメモリの大手サンディスクの失敗しないSDカードの選び方に掲載されている表から抜粋再構成しました。

最低転送速度 UHSスピードクラス ビデオスピードクラス おすすめ
90MB/s以上 V90 8K
60MB/s以上 V60 8K
30MB/s以上 クラス3 V30 4K(UHD)
10MB/s以上 クラス1 V10 フルHD(FHD)

しかし実際のSDカードにはこれらが一緒くたに書かれているので、初心者には非常にわかりにくいんですね。

次の画像もサンディスクさんの失敗しないSDカードの選び方から拝借しました。

サンディスクのSDカードパッケージ解説

ご覧のとおり細かくびっしり書かれているので、予備知識なしではわかりません。

ちなみに、パッケージに書かれている速度は最大速度ですが、動画撮影には最低速度がどれくらいあるか(保証してくれるか)の方が重要ですから、スピードクラスの方をチェックしてください

先ほども触れたとおり、一般に4K動画ではSDカードスピードクラス10UHSスピードクラス1ぐらいのスペックが推奨されてきました。

しかしこれは一般的なホームビデオユーザー向けの情報でしょう。

今回は単なる4K以上に高画質撮影ができるものを狙うので、一般的な基準に従うだけでは不安があります。しかも、一回で1時間以上の長時間収録になるから必要な容量も重要です。

なにしろ他人様のお金を預かるわけですから失敗はできません。

そこで、ターゲットになるカメラのスペックを調べることにしました。

目標スペックをカメラの仕様書から割り出す

SDカードにどれくらいの書き込み速度が必要かは、カンタンにいうと記録するフォーマット(4K UHDかフルHDか)とカメラの画質設定で決まります。

まずカメラを選定する段階でスペックを調べましたが、カタログ程度の情報では欲しい情報がわかりませんでした。

そこで、候補を絞り込んだ時点で、取り扱い説明書をダウンロードしてもっと詳しいデータを探します。

現在ではマニュアルがPDF化されていてカンタンに手に入るから、こういう点は楽ですね。

PDFファイルを見ると次のようなデータがわかりました。

有力候補カメラのMP4動画仕様

  • 圧縮方式 H.264

  • カラーサンプリング 4:2:0 8bit

  • フレームレート 59.94P、29.97P、23.98P

  • ビットレート 150Mbps、35Mbps、17Mbps、8Mbps、4Mbps

これは、カメラ本体(に挿入するメモリカード)に動画保存するときの仕様です。

ビットレートの最高値が150Mbpsなので、カメラで最高の画質を狙うなら150Mbps以上のカード、そこそこの画質で済ませるなら17Mbps以上のカードがあれば良さそうです。

比較のときは単位に注意しよう

ところがややこしいことに、SDカードに書かれているスペックはビットレートとちょっと違っているので単純に比較できません。

ビデオカメラのスペックに出てくるbpsというのはビット数/秒(bps)なんですが、SDカードに書かれているのはバイト数/秒(Bps)です。

Bかbか、大文字か小文字かで意味が違います。

150Mビット/秒をバイト/秒に直すと約18.75MB/秒。

35Mビット/秒をバイト/秒に直すと約4.37MB/秒。

なので、最高画質で撮る場合UHSスピードクラス3またはビデオスピードクラスV30のカードが必要です。標準画質ならUHSスピードクラス1またはビデオスピードクラスV10となります。

単位の違いに注意

ビデオカメラ本体のスペック(ビットレート)とSDカードのスペック(書き込み速度)では単位が違うので単純比較しないように。

bps(ビット/秒)を1/8にするとB/s(バイト/秒)

動画記録時間のめやす

続いてMP4で収録した場合の、録画時間のめやすを掲載します(取扱説明書より一部抜粋のうえ再構成)。

メモリカード容量 ビットレート 録画時間
64GB 150Mbps 約55分
64GB 35Mbps 約3時間40分
64GB 17Mbps 約7時間
128GB 150Mbps 約1時間50分
128GB 35Mbps 約7時間25分
128GB 17Mbps 約14時間5分

今回、イベント本編は約1時間強。さらに予行演習や事前の会場風景、終了後などの裏方的な部分まで撮ると考えると、最低128GB、できれば256GBは確保しておきたいところです。

4K最高画質の記録ならV30クラス 128GB

以上から、今回候補にしているビデオカメラの標準的な画質で4K収録する場合、UHSクラス1/ビデオスピードクラスV10。容量は32GBあれば、当面のイベント撮影には充分であろうと思われます。

一方、最高画質での録画を狙うならV30クラスのSDカード、容量は128GB必要でしょう。ステージ裏などの収録まで行うなら256GBほしいところです。

外部レコーダー使用でより高画質記録を狙える

ところで、実は今回候補として狙っているビデオカメラは、HDMI接続で外部レコーダーを使って録画するとカラーサンプリング4:2:2 10bitで記録可能です。

このスペックはカンタンにいうとプロが本格的な映像作品を制作するレベルです。

アマチュアが地方のイベント記録に使うようなレベルではない(ムダというか分不相応)と思いますが、しかし、これから長く映像の記録を残していくという点では非常に魅力的です。

問題は、10bitで記録すると色情報が格段に増えて、その分大容量が必要になるという点。

ところがビデオカメラの取扱説明書を見ても外部レコーダーで記録する場合のビットレートが書かれていません

そこで、ワンスペック上のビデカメラで4:2:2 10bit録画に対応するカメラを探し、ビットレートと録画時間を調べました。

キヤノンXF-705のスペック

キヤノンのプロ用カメラにXF-705という最新機種があり、XF-HEVCフォーマットで4:2:2 10bit記録が可能です。

スペックからビットレートと記録可能時間を調べました(取扱説明書より一部抜粋のうえ再構成)。

メモリ容量 ビットレート 録画時間
64GB 160Mbps 約50分
64GB 110Mbps 約75分
64GB 60Mbps 約140分
128GB 160Mbps 約105分
128GB 110Mbps 約150分
128GB 60Mbps 約280分

ビットレートを見ると160Mbpsなので今回のターゲット機種とそれほど違いありませんが、要注意なのはフォーマット名がXF-HEVCとなっているのでコーデックがH.265/HEVCではないかと思われます。

H.265は従来のH.264に比べ2倍ぐらいの圧縮性能があるといわれます。

それに対し今回の候補機種ではH.264なので、同じ4:2:2 10bit記録にすると2倍ぐらいのデータ量になるかもしれません。

ちなみにXF-705ではXF-HEVCでの4K撮影やスローモーション撮影時にはUHSスピードクラス3のカードを推奨しています。

基本的には大容量化する4:2:2 10bit撮影ですが、このXF-705では圧縮率の高いH.265を使うことで、UHSスピードクラス3でも扱えるようになっていると思われます。

キヤノン XC-10のスペック

キヤノンのXC-10という機種ではカラープロファイルの仕様が書かれていませんが、スペックを見ると次のようになっています(取扱説明書より一部抜粋のうえ再構成)。圧縮コーデックはH.264です。

メモリ容量 ビットレート 録画時間
64GB 305Mbps 約25分
64GB 205Mbps 約40分
128GB 305Mbps 約55分
128GB 205Mbps 約80分

コーデックがH.264でビットレートはXF-705の約2倍になっています。

この値は、今回候補にしている機種で、4:2:2 10bit外部録画にした場合のデータに近いのではないかと想像されます。

ちなみに、XF-705はV30クラスのカードで録画可能なのでSDカードスロット仕様(UHS-Ⅰ)ですが、XC10は4K撮影時にはCFastカードスロットを使用ます。

SSDなら高画質収録が可能

XC-10の最高ビットレート305Mbpsを1/8すると約38MB/sになります。ビデオスピードクラスV30では残念ながら対応できません。

この値を参考にすると、どうやら候補機での外部レコーダー収録ではV60クラスのSDカードが必要となります。


そしてV60以上になると、UHSの規格自体UHS-Ⅱにアップします。つまりビデオカメラもレコーダーも、そして編集時に必要なメモリカードリーダーもUHS-Ⅱに対応していないとスピードを活かせません。

 

しかし、最高画質での保存を考えるなら、SDカード以外にSSDという手段もあります。

現在では、高速大容量なSDカードよりも、むしろSSDのほうが低価格です。

容量のほうは256GBあれば100分程度収録できる計算になります。

実は今回想定しているイベントは基本的にカメラを三脚に据えての撮影で、移動しながらの撮影はありません(裏方の撮影などを除けば)。

なので、外部レコーダーを使った収録は充分現実的です。

とりあえず今回調べた情報をまとめておきます。

  • メディア容量は画質(ビットレート)と収録時間で割り出す
  • SDカードの書き込み速度はカメラのビットレートの1/8を基準に選ぶ
  • 150Mbpsなら64GBで約50分撮影可能
  • H.264の4:2:2 10bit収録はV60以上のカードとUHS-Ⅱ対応機器が必要
  • 固定撮影が基本なので外部レコーダー収録もあり

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