でのマルチカメラ配信用に、iPhoneのWebカメラ化アプリの中からいくつか試したので、各アプリの概要とインプレッションを紹介します。
紹介のポイント
ご了承ください。
iPhoneをWebカメラ化するアプリ
COVID-19でテレワーク/リモートワークに迫られるようになって以来、テレビ会議用にWebカメラの需要が急増してあちこちで在庫切れ、欠品が続いていると話題になりました。
そこで脚光を浴びたのが、スマートフォンをWebカメラの代わりに利用できるようにするアプリです。
Fukuzumi個人としてはこれまであまり必要性がなかったんですが、マルチカメラでのライブ配信設定をチェックするする必要が出てきたため、テストしてみることにしました。
マルチカメラでのライブ配信をテストする
テストの目的は、複数カメラを使ったライブ配信がどの程度手軽にできるかと、実用性の確認です。
借り物ではありますが実質的に私が管理しているキヤノンの業務用ビデオカメラXF400と私物のソニー製ハンディカムに加えてもう一台カメラを追加します。
配信には予算の関係で、できれば特別な機材を追加したくないのでOBS Studioを使って、カメラ3台で実用的な運用ができるかテストします。
そのための3台目のカメラとして、とりあえず手持ちのiPhoneを使ってみようというわけです。
試用したアプリはこの4つ
"スマートフォン Webカメラ”などのキーワードで検索すると有名なアプリがみつかりますが、根が天邪鬼なのであまり紹介されていないも含めて以下のようなものを試してみました。
下のふたつはWebでもわりと情報を見かけるソフトで、特にiVCamはお薦めとして紹介されることも多い製品です。
それに対し、上のふたつは定番以外の「外し」を狙ってテストしてみました。
EpocCamがElgatoへ移行
2020年12月時点で、EpocCamはElgatoブランド(Screen Linkと同じ)からの配布となっているようです。
kinoni.comへアクセスすると、elgato.com内のEpocCamページへリダイレクトされます。
共通する特徴
いちおうiPhone用アプリとして紹介していますが、実際にはPC側にもソフトウェアのインストールが必要です。
つまり、iPhone用アプリを送信機とすると、PC側に受信機となるソフトというかドライバーが必要で、ふたつ揃ってペアで動作することになります。
とはいってもPC側のソフトは基本的にインストールするだけで細かい設定などはありません。
ただOBS Studio上で映像ソースを指定するだけです(iVCamだけはアプリの起動も必要ですが)。
送信側であるiPhoneアプリとの連携も、自動認識で簡単にやってくれるので難しい知識や操作はいりません。
アプリ紹介
Screen Link
ゲーム機の画面を配信できるようにするキャプチャーボックス、ソフトウェアのコマンドをキー操作できるようにするプログラマブルキーボードなどの製品がゲーマーに人気の社が提供するソフトです。
正確にいうとカメラアプリというよりは、iPhoneの画面をOBS Studioに表示できるようにするツールですが、その機能のひとつとしてカメラとしても利用できます。
無料版のScreen Linkと有料版のScreen Link Proがあり、無料版(1,200円)はキャプチャー可能な時間が15分に制限されていますが、有料版では制限がありません。
また無料版はビットレートが16Mbpsなのに対して、有料版は32Mbpsとなっています。
PCとの接続はWi-Fiのみで、Lighteningケーブルを使った転送はできません(給電用としては利用できます)。
PC側には4K Capture Utilityというアプリケーションをインストールしておく必要があります。
からダウンロードしてください。
使い方はやや特殊で、iPhone本体の画面収録機能のひとつとして動作します。 画面収録はiPhoneの画面操作をiPhone自体で録画したり、インストールしたアプリ(Skypeその他のWeb会議ツールなど)に送るための機能ですが、その中のひとつとしてScreen Linkを指定すると、パソコン側のScreen Linkで映像と音を受け取れるようになります。
弱点として、アプリ上に表示されるアイコン(インカメラ/アウトカメラ切り替え用のアイコンやカメラモードを終了するためのアイコン)が配信上にも表示されてしまうという問題があります。
また、カメラのフォーカスや明るさなどはいっさい操作できません。
Web会議などではさほど気にならないかもしれませんが、本格的な配信用としてはちょっと残念な点です。
ただし、カメラとしてではなくiPhoneの画面操作を配信するためのツールとしてはかなり使えそうです。
HD Camera for OBS Studio
iPhone用のWebカメラ化アプリをPC上で検索してもあまりヒットしないのですが、ちょっと気になったので試してみました。
よく似た名前でCamera for OBS Studioというのがありますが、まったく別のアプリです。
Camera for OBS Studioは買い切りで24ドル99セントなのに対して、HD Camera for OBS Studioのほうは無料となっているので試してみましたが、実は無料で利用できるのは3日間だけでその後は1ヶ月単位で課金されます。金額は最初見たときは200円でしたが、その後300円になっていました。
このソフトは、ケーブル接続専用なのでバッテリーの心配はない代わりに、使用場所が限られます。テーブルトップでの固定使用向きでしょう。
PC用のOBS Studioプラグインはというサイトから入手します。
"Tutorial”のページに進むとPC版とMacOS版のプラグインをダウンロードできます。
OBS Studioのプラグインとしてインストールされるで、キャプチャーデバイスの設定はメニューから[iDevices Cam]というのを選択するだけです(映像キャプチャデバイスの追加ではありません)。
プラグインのインストールさえできていればiPhoneとの接続は簡単で、Lighteningケーブルをパソコンに接続するだけで認識してくれます。
弱点としては、ケーブル接続なのにも関わらずなぜか遅延が大きいのと、iPhoneを横に動かしたときに画面全体を覆うように巨大なモザイク状のノイズが入ってしまうのがたいへん気になります。
つまりカメラ固定かつ一台のみで使うのならともかく、ほかのカメラとの併用で切り替えて使うのにはまったく適していません。
そのほかには、iPhone側マイクのオン/オフ切り替え、ピンチイン/アウトによるズーム、インスタグラムでおなじみの色調選択などの機能があります。露出やフォーカスの調整はできません。
EpocCam
かなり有名なアプリで、検索すると紹介記事は比較的簡単にみつかります。
無料版で手軽に試すにはいいんですが、広告の表示がかなりわずらわしいのと、機能制限が多いのでどうせなら有料版(7.99ドル)を買った方がお薦めです。
このアプリの特徴は、これまでのふたつと違い、Wi-Fi接続とケーブル接続のどちらにも対応しているところです。
接続自体も簡単で、受信側のPCにドライバーがインストールされていて、iPhone側でアプリが起動していればあとはWi-Fi接続やケーブル接続を自動的に検知してつないでくれます。
PC側のアプリはで入手します。
最新版情報
最新版はElgatoからのリリースとなっています(2020年12月現在)
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新しいEpocCamは魅力アップでElgatoから配布中
スマートフォンをWebカメラ化するアプリの記事で紹介したEpocCamのデリバリー元がいつの間にか変わっていました。 従来kinoni.comから公開されていましたが、なんと先の記事でも紹介しているS ...
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インストールするとドライバーだけでなくEpocCam Viewerというアプリケーションもセットアップされ、接続の確認ができますが、OBS Studioを利用して配信を行うのであれば、EpocCam Viewerは不要です。
OBS Studio側の設定は、ふつうに映像キャプチャデバイスを登録して”EpocCam Camera”を選択します。
無料版では配信サイズが640×480ピクセルなので、プレビューや配信画面上では配信画面サイズに対して表示エリアが小さく、そのままだとピクチャーインピクチャーのような表示しかできません。画面いっぱいに配信したいときはサイズを広げてやる必要がありますが当然その分画質は落ちます。
有料版になるとフルHDでの配信ができるほか、iPhoneのマイクが使える、タップしてピントを合わせるマニュアルフォーカスが可能、デュアルカメラに対応などのメリットがあります。
特にiPhone側のマイクが使えるようになると、Wi-Fi接続と併せて手持ちの移動カメラ的な使い方が可能になります。
逆にいうと無料版は制限がきつくて、使い途があまりないという印象です。
iVCam
iVcamは今回採り上げた4つのアプリのなかでもいちばんメジャーだと思われます。
ほかの3つがどれもいまひとつだったので、結局一番人気のソフトを試すことにしました。
無料版ではカメラの解像度が640×480ピクセルに制限され、映像の左上にiVCamのロゴが入ります。ほかにもいくつか機能制限がありますが、嬉しいことにAE/AFロックが使えるのが大きな魅力です。
特にAEロックで被写体の明るさを固定できるので、明るすぎる背景に露出が引っ張られてしまうのを避けられます。
無料版でこれがあるだけでも大きなアドバンテージです。
このソフトもスマートフォン用アプリとPC側のドライバーをセットでインストールします。
PC側には、iVCam Viewerというアプリケーションもインストールされ、OBS Studioで使用する場合も起動する必要があります。
いちど接続が確立できたら、iVCam Viewerのウィンドウは閉じても構いませんが、そのばあいもシステムトレイに常駐しておく必要があります。完全に終了させてはいけません。
接続自体は簡単です。PC側のOBS Studio、スマートフォン側のiVCamどちらも起動していれば自動的に接続してくれます。
接続はWi-Fi、Lighteningケーブルの両方に対応しているので、モバイルカメラとして動き回って使うことももケーブルで給電しながら固定カメラとして使うこともできます。
無料版だとたまに広告が入りますが、EpocCamほど煩わしさはありません。
注意する点としては、iPhoneのマイクを利用するには仮想サウンドカードをインストールする必要があります。映像だけの収録だったら簡単ですが、音声まで収録しようとするとややめんどうなので注意が必要ですね。
E2EsoftではVirtual Sound Cardという製品(19.95ドル)を販売していますが、ほかの仮想サウンドカードでも動作するようです。
ポイント
iVCamのマイク機能を使用する方法として、無料の仮想オーディオデバイス**VB-Audio Cable**の使い方を解説しました。
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iVCamを外部マイクとして使う(仮想オーディオデバイス設定)
以前紹介したiPhoneをWebカメラ化するアプリの比較記事では、iVCamがベストという結論に落ち着きましたが、残念なことにそのままでは音声収録ができません。 せっかくWi-Fi接続できるんだから、 ...
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また、このアプリでは、撮影中のスナップショットや録画を保存できます。これはアプリの画面上から操作しますが、そのほかにiVCam Viewerからも操作できます。
有料版は1,220円でiVCamのロゴは入らなくなるほか、解像度の制限(640×480ピクセル)が解除されて最大4Kまでの指定が可能。またフレームレートの指定(デフォルト15、最大で60)、画質の変更(3段階)などが可能になります。
またiVCamならではの特徴として、マルチインスタンスという機能があります。これはiVCamをインストールしたスマートフォンを複数用意することで、iVCamだけでマルチカメラを利用できるというものです。
マルチインスタンスを使うにはちょっとした設定が必要ですが、複数のカメラを切り替えて使いたい方には大きな魅力でしょう。
iVCam人気の理由がわかった
今回4つのアプリをテストしてみましたが、結局のところiVCamの人気が高い理由がうなずけました。
アプリの価格としては1,220円はちょっと高く感じられるかもしれませんが、品薄になっているWebカメラを購入する費用を考えると充分納得できる範囲ではないでしょうか。
ひとつ弱点があるとすれば、パソコン側にインストールするソフトがMacに対応していないという点ですが、当サイトを見に来る方は全員Windowsユーザーでしょうから、あまり重要ではないでしょう。
他の3つのアプリについては、気にする必要ありません。ただし、当記事の趣旨とは違いますが、iPhoneの操作をライブ配信で見せたいのであればScreen Linkについてはインストールする意味があります。
15分という制限がありますが、操作のたびに起動するのであればさほど困らないのではないでしょうか。
また無料版アプリは解像度が640×480に限られるため、ライブ配信用のマルチカメラという観点では、もの足りないこともわかりました。結局有料版が必要になるでしょう。
iPhoneをWebカメラ化するアプリ - まとめ
- 接続は4つのアプリどれも簡単
- EpocCamは無料版の機能制限が多くて魅力が薄い
- iVCamの人気には確かな理由がある
- Screen LinkはiPhoneの操作説明用としては意味がある
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