ATEM Mini Pro(Blackmagic Design)をiPhoneやiPadからリモートコントロールするアプリをいくつかピックアップしました。
今回はその中から2つを選んで接続テストを行なったので、まず接続方法について紹介します。
この記事の目次
今回試したiOSアプリ
今回テストしたアプリは次のふたつです。
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Strata View
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MixEffect
Strata View
は正確にはリモートコントロールアプリではありません。ATEMシリーズ製品の動作(スイッチャーでどのカメラが選択されているか)を手元のiPhoneやiPadで確認できるモニターツールです。今回は接続テストのため無料版を使いました。
実際にリモート操作するには、Strata LiteやStrata Proなどの有料版が必要となります。
カメラの切り替えだけなら700円のStrata Liteがお手頃です。
MixEffect
は、MixEffect Proからカメラの切り替え操作のみに機能を絞った限定版です。
Pro版になると音声ミキサーの操作やマクロ機能、静止画像のアップロード、Elgato Stream Deckとの連携、カメラ切り替え時のアニメーション効果など膨大な機能がありますが、そのぶん価格も7000円とかなり高価になります。
Pro版は30日の試用期間があります。試用するにはアプリ内課金(無料ですが)の手続きが必要なので、逆にいうとカメラの切り替えだけでよければ、無料版のまま使い続けられるかもしれません。この点は今後チェックしてみます。
LAN接続が必須
ふたつのアプリに共通する動作条件として、ATEMシリーズのスイッチャーを有線LANに接続する必要があります。
配信用PCにUSB接続しているだけでは操作できないので注意してください。
iPhone/iPadと配信用PC(ATEM Mini Proを接続しているPC)の間はWi-Fi接続なので無線ですが、パソコンとATEM Mini Proの間は(ルーターを挟んだ)有線接続となります。
ふつうはUSB接続で使っていると思いますが、そのほかに有線LANが必要ということです。
もちろん配信用パソコンもLANに接続している必要があります。有線でもWi-FiでもOK。
YouTubeにあがっている解説動画を見ていると、ここのところの説明を省略しているものが多いようです。
IPアドレスの指定が必要なので「ちょっと慣れた人なら当然わかる」という割り切りなんでしょうが、Wi-Fiしか使ったことがなく、IPアドレスそのものをよく知らない人も増えてきていると思うので、念のため強調しておきます。
有線LAN用のケーブルを用意して、ATEM Mini Proをルーターに接続しておきます。
ATEM Mini ProのIPアドレス設定
続いてATEM Mini ProのIPアドレスを確認します。
ATEM Software Controlを起動して接続設定を確認するんですが、ここでLANの基礎知識が必要になります。
ATEM Mini Proを配信用パソコンに接続して電源を入れ、さらにATEM Software Controlを起動します。
正しく接続されていれば、操作画面が現れます。
[ファイル]メニューを開いて[接続]を選択。
”ATEM接続”というダイアログボックスが現れます。
この画面では、すでにIPアドレスが設定されていますが、念のためなにも設定されていなかった場合を想定して説明します。
初期値では接続できない
ダイアログボックスの左下にある[ATEMセットアップ]をクリックすると、次のようなセットアップ画面が現れます。
接続済みのデバイス(ここではATEM Mini Pro)の写真が表示されていて、その下にふたつグレイのアイコンが並んでいます。
このうち左側のアイコンをクリックすると、ネットワーク設定画面が現れます。
ここで大事なのが、赤枠で囲ったIP Addressとひとつ飛んでGatewayという項目。
上の図ではすでに”192.168.1.15"と”192.168.1.1"という値が設定されていますが、これはすでに接続テストを終わっているのでそのときに設定したモノ。
なにも触っていない初期状態だとここが”192.160.0.240”と”192.160.0.1”といった値になっているはずです。
この初期状態のままだと繋がらないので、ご自分のネットワーク環境に合わせた設定が必要になります。
上の図にあった”192.168.1.15"と”192.168.1.1”は、私の環境に合わせて私が設定したものです。
IPアドレスの役割
IPアドレスはパソコンネットワークの中での番地を表します。
世界中にはたくさんのネットワークがあり、それらがごっちゃにならないようにグループ分けし、さらにそのグループの中で番地を割り当てることで、パソコンその他のデバイスが正しく通信できるようにします。
インターネットに繋がっているパソコンやスマートフォン、LAN接続のプリンタ、オンラインゲームをプレイするゲーム機などはすべてこのIPアドレスが割り当てられています。
今回のようにATEM Mini Proをリモート操作する場合、iPhoneから命令を送るためにATEM Mini Proに番地を割り当てておく必要があるというわけです。
具体的には"192.168.1.15"という設定だと、”192.168.1.”までがグループを表し、末尾の”15"はグループ内での番号です。
末尾の番号を間違えると正しい相手に命令が届かないし、グループを間違えたばあいももちろん届きません。
'192.168.1.15”と”192.168.0.15”だと末尾の番号は同じでもグループが違うので繋がらないということです。
自分のネットワークに合わせて設定する
ATEM Mini Proの初期状態だとたぶん”192.160.0.240"になっているので、これを自分の、あるいはライブ配信を行ないたい会場のネットワーク設定に合わせて変更します。
最近ではルーターに接続すると自動的にIPアドレスを割り当てるのがふつうなので、どんなIPアドレスが割り当てられているか知らないという人も多いと思いますが、今回はiPhoneのリモコンアプリにATEM Pro Miniのアドレスを教える必要があるので、この確認が必須です。
今回は自宅オフィスのネットワークなので自分のパソコンのIPアドレスをまず確認します。
Windows11パソコンの場合、一例ですが検索バーで”cmd”とキー入力すると「最も一致する検索結果」に「コマンドプロンプト」と表示されます。
これを実行すると次のようなウィンドウが現れます(コマンドプロンプトウィンドウ)。
C:\Users\ユーザー名>
のように表示されているので、続けて”ipconfig"とタイプし、【Enter】キーを押すと次のような文字が画面に現れました。
ここでIPv4 アドレスと書かれているところに注目。ここでは"192.168.1.5"となります。
このパソコンは”192.168.1."グループの"5"番に割り当てられていることがわかりました。
スマホのIPアドレスもチェックしておく
続いてリモコン操作に使うスマートフォンのIPアドレスもチェックします。
今回はiPhoneを使用するので、iPhoneの設定画面を開き、[Wi-Fi]設定をタップ。
ここではすでにWi-Fi接続済みなので、接続中のネットワーク情報が現れます。
接続先ルーター(Wi-Fi親機)名の横にある[i]のアイコンをタップすると、詳しい設定が表示されます。
これを見ると、このiPhoneのIPアドレスは”192.168.1.8”であるとわかりました。
ATEM Mini ProにIPアドレスを割り当てる
これで配信に使うパソコンとリモコン操作用iPhoneのIPアドレスが判明しました。
ほかにもネットワークに繋がっているデバイスがある場合は、同じ要領ですべてチェックしていきます。
すべてのデバイスのIPアドレスをチェックし終わったら、いよいよATEM Mini ProにIPアドレスを割り当てます。
もちろん、すでに割り当てられている番号と重複しない値を選ぶ必要があります。
一般論ですが、ホームネットワークだったらネットワーク接続しているのは多くても10~20台ぐらいだと思うので、だいたい30番以降を割り当てておけばいいでしょう。
ホームセキュリティやスマート家電などをたくさんネットワークにつないでいる家庭、大規模な公共施設だったら100番台や思い切って200番台を割り当ててもいいと思います。
ちなみにひとつのネットワークグループの最大接続数は255です。また、192.168.1.0や192.168.1.1のように末尾が0と1は絶対に割り当ててはいけません。
というわけで今回は、すでに紹介したとおり”192.168.1.15"を割り当てました。
このIPアドレスを使って、リモコン操作アプリを設定します。
Strata ViewをATEM Miniに接続する
まずStrata Viewを設定してみましょう。
アプリを起動すると次のような画面が現れます。
このボタンは接続しているATEMスイッチャーに応じて変化します。ここではすでにATEM Mini Proに接続済みなのでそれに応じたボタンレイアウトになっています。
中央上の[i]ボタンをタップすると、IPアドレスの設定画面が現れます。
このテキストボックスに、ATEM Mini Proに割り当てたのと同じIPアドレスを入力します。
[DONE]をタップしたら設定は終了です。
前述のとおり、Strata Viewはリモートでステータスを確認するためのツールなので、iPhone側からの操作はできませんが、ATEM Mini Proでカメラ切り替えなどの操作するとその状態を通知してくれます。
MixEffectとATEM Mini Proの接続
次はMixEffect(無料版)をATEM Mini Proと接続します。
まずMixEffectを起動すると次のようなな画面が現れます。
[New ATEM Switcher]の部分をタップして、登録画面を開きます。
参考
[+]ボタンをタップしてメニューから追加することもできます。
適当な名前を決め、ATEM Mini Proに割り当てたIPアドレスを入力します。
指定が終わったら右上の[Add]をタップして設定完了です。
MixEffectではたくさんのスイッチャーを登録できるので、複数の設定を使い分けたいときはそれぞれに判りやすい名前をつけておきましょう。
登録が終わると、次のような画面に切り替わります。
ここで[Connect]をタップすると、選択したスイッチャー(ここではATEM Mini Pro)と実際に接続されます。
接続が完了すると、いよいよ操作画面です。
上の画面はATEM Mini Proのカメラ1が選択された状態。
ここからカメラ3を選択すると、次のようになります。
赤くなっているCAM1はまだ放送中(Program)のままで、CAM3は待機中(Preview)となりグリーンが点灯しています。
つまり、このままではまだ配信映像は切り替わっていません。
そこで[CUT]または[AUTO]をタップすると、CAM3が放送(配信)中となり、逆にCAM1が待機(Preview)になります。
これでMixEffectからATEM Mini Proをリモート操作できるようになりました。
切り替え方法に注意
ATEM本体では、カメラ切り替えの方法がふたつあり、ボタンを押すと直ちに切り替わる”A/B切り替え”を選ぶこともできます。
しかし、MixEffectではATEM側の設定に関係なく、プログラム/プレビュー方式の切り替えしかできないようです。あるいはPro版にアップグレードすると変更可能になるのかもしれません。
次に接続するときは
MixEffectのばあい、いちどスイッチャーと接続したらあとは任意に切断しない限りそのまま接続が維持されるので、次もすぐに使うことができます(ネットワーク設定に変更がなければ)。
意図的に切断したいときは、操作画面から[<Back]で機能選択画面に戻り、下の方へスクロールするとスイッチャー選択リストがあるので、そこからスイッチャーを切断します。
スイッチャー名をタップすると次の画面に[Disconnect]ボタンがあるので、タップして接続を解除しましょう。
なお、スイッチャー名を左へスワイプすると[Delete]コマンドが現れるので、スイッチャー設定自体を削除できます。
MixEffectをLANケーブルで直接ATEM Miniに接続する
今回はATEM Mini Proを配信用パソコンに接続する例を紹介しましたが、パソコンを使わずにATEM Mini Proだけで直接配信することも可能です。
その場合、iPhone/iPadを直接、ATEM Mini ProにLANケーブルで接続することも可能です。
接続例を解説した動画(英語)がありますので紹介しておきます。
少ない制作スタッフの助けになる
このようにiPhone/iPadを使って、ATEMシリーズのスイッチャーをリモート操作できることがわかりました。
番組制作の人手がたりないとき、スイッチャー専任の担当者を置かなくても、カメラオペレーターや場合によってはキャスターや出演者がカメラ切り替えを兼任できます。
ATEMスイッチャーをアプリ操作するときのポイント
- ATEMスイッチャーを有線LANでネットワークに接続する
- ネットワーク上の全デバイスのIPアドレスをチェックする
- ATEMスイッチャーにほかのデバイスと重複しないのIPアドレスを割り当てる
- コントロールアプリにスイッチャーのIPアドレスを登録する