ELEMENTの基本的な使い方を紹介していきます。
今回はオーディオインターフェイスの入出力設定とシグナルチェーンの基本的な接続についての解説となります。
なお、筆者の環境では実用上問題となる部分が見つかったので、最後にその点についても説明します。
インストールと基本的なセットアップについては前回記事を参照してください。
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この記事で紹介するポイント
- オーディオインターフェイスの入出力ポート設定
- ノードの接続と切断方法
- デュアルモノの設定
- プラグインの追加方法
- プラグインの表示トラブルについて
この記事の目次
操作の流れ
新規に作成したセッションに、オーディオ信号の流れを図で描いていきます。
編集画面上に入出力のポートやプラグインなどの部品を配置し、その間を線でつないで配線図のようなものを描きます。
ちなにこの作業画面はGraphといいます。
「部品」は左ペインのリストからグラフ上へドラッグするか、または空白部分を右クリックしてポップアップメニューを開き、そこからパーツを選択します。
各パーツには入出力をあらわすノードがついていて、ノードとノードをつなぐようにドラッグすると配線できます。
オーディオインターフェイスの入力ポート設定
まず、オーディオインターフェイスからの信号をセッションに入力できるようにします。
グラフ上で右クリックし、ポップアップメニューから[Audio Inputs]を選択。
オーディオインターフェイスの入力用パーツが配置されます。ここでは「Revelator ASIO」という名前になっています。
入力用ボックスではノードが下側についています(ライトグリーンの小さい丸)。
ノードの上をマウスでポイントすると、チャンネル名または接続する機材名がチップヘルプの形で表示されます。
グラフミキサーの表示
グラフ上にパーツを配置すると、それぞれのパーツにおける音量を表すレベルゲージを表示できます。
[View]メニューから[Graph Mixer]を選択すると、ウィンドウ下側にレベルゲージがひとつ現れます。
これはRevalator ASIOの入力用ポートの音量を表します。
レベルゲージのほかにミュートやオン/オフ切り替え用のボタンがあり、各パーツでそれぞれ選択できるようになっています。
出力ポートにシグナルをルーティング
次にオーディオ信号の出力先を追加します。
入力ポートのときと同じように右クリックでポップアップメニューを開き、[Audio Outputs]を選択します。
入力ポートのいちばん左のノード(Mic/Inst1)から、出力ポートのいちばん左のノードまでマウスでドラッグすると入出力のポートが繋がります。
これでマイク入力した音声がオーディオインターフェイスに戻ってきて音を聴けるところまで設定できました。
ミキサーには出力ポート用のレベルゲージが追加されています。
マイク入力をデュアルモノ化する
このままではステレオ2chのうち左にしか音声が入らないので、右チャンネルにも同じ音が流れるようにします。
先ほどと同じく入力ポートのMic/Inst1からドラッグして、出力ポートの左からふたつめにつなげばOK。
これで左右両チャンネルから同じ音が流れるデュアルモノのルーティング完成。
ギターの入力
続いてエレキギターの信号を同じくデュアルモノになるようにルーティングします。
入力ポートのチャンネル2(左からふたつめ)と、出力ポートをドラッグ。先ほどのマイク入力と同じところにつないでやります。
これで形だけはマイク、ギターのどちらも左右チャンネルに流れるようになりました。
ルーティングをやりなおす
以上、ルーティングの基本操作を紹介しましたが、実際には入出力の間にいろんなプラグインを入れて加工していくことになります。
いちどつないだルーティングを削除するには線の途中をマウスでドラッグして、なにもない適当なところでボタンをリリースします。
ノード上でドラッグしても切断にはならないの注意してください。
ボーカルにリバーブ用プラグインを入れてみる
ELEMENTにはもともといくつかのVSTプラグインが付属しています。
そのなかにeVerbというリバーブがあるので、これをボーカルのシグナルチェーンに追加してみます。
右クリックでコンテクストメニューを開くと「Plugins」というグループがあり、いくつかのサブメニューに分かれています。
ELEMENTにもともと付属しているプラグインは[Element]にまとめられています。
そこから[everb]を選択すると、プラグインが追加されます。
先ほどと同じ要領でポート間をドラッグしてつないでやればリバーブの設定完了です。
ルーティングを見直す
先ほどの図ではボーカルが左チャンネルにしか入らない状態に戻ってしまいました。
そこでもういちどデュアルモノになるようにつなぎ直します。
ただしギターの音はリバーブを通したくないので、別のところでつなぐ必要があります。
そこでリバーブの後ろに「Audio Mixer」というパーツを追加してみました。
これはミキサーまでは左チャンネルのみで、最後にオーディオインターフェイスに出力するところでデュアルモノ化する形です。
しかしこれだと、PC上では成り立つものの、現実の機材セットアップとしては不自然なので、あらためて接続しなおしたのが次の図です。
これだとマイク信号をリバーブに入る段階でデュアルモノ化し、以後は2ch化した信号を流す形になります。
アンプシミュレーターを追加
これにギター用のアンプシミュレーターを追加します。
こんどは左ペインのプラグインリストからBIAS FX2_x64を、グラフ上にドロップしました。
プラグインをドロップするとウィンドウにプラグインの画面が現れます。
入力ポートのチャンネル2からBIAS FX2_x64の左右入力チャンネルにそれぞれ線をつなぎ、出力チャンネルから、Audio Mixerの3/4チャンネルに接続します。
Audio Mixerの出力は2chなので、それぞれデュアルモノ化されたマイクとギターがオーディオインターフェイスに出力されることになります。
プラグインの操作に問題発生
以上で基本的なルーティングは終わり、ちゃんと音がでることが確認できました。
ところが実際には使い物にならないのがすぐに発覚します。
アンプシミュレーターBIAS FX2_x64のウィンドウが小さすぎて操作ができません。
先ほどの図を見ると、そのひとつ前の図にあったアンプの画がなくなっています。
実はこの時点で、プラグインの画面の一部がすでに表示されていなかったのですが、さらに操作している途中でウィンドウが不自然に小型化されてまったく操作できなくなっていました。
音は出ているのですが、サウンドの調整ができなくてはアンプシミュレーターの意味がありません。
これはCantabileの時にも発生した問題で、高解像度向けにデザインされたプラグインをVSTホストが正しく表示できないようです。
ところがのに対し、ELEMENTにはどうもそれが見当たらないようです(探し方が悪いのかもしれません。)
基本はいいアプリなんだけど・・・
ELEMENTに付属のVSTプラグインではこのような表示の問題はいまのところ遭遇していませんが、いろんなメーカーのプラグインを使えるところがVSTホストの魅力ですから、これでは価値が激減です。
せっかく初心者向けのいいアプリケーションだと思い、張り切って紹介したのですがちょっと腰砕け。
しばらく調べてみて、もし解決策が見つかったらまた改めて紹介したいと思います。