iPhoneとWindows PCを使った講習会に向けて、HDMI切り替え器を買ってテストしたらとても快適でした。
スマートフォンとPCを併用してプレゼンテーションや講演を行うなら必須と言っていいでしょう。ここではホーム用とは違う、プレゼンテーション用という視点からHDMIセレクタの選び方を紹介します。
この記事の目次
スマホとPCを使い分けるならHDMI切り替え器は必須
HDMI切り替え器(セレクター)は、数台のHDMI機器をテレビモニターやプロジェクターなどにつなぎたいときに簡単に切り替えられるようにする装置です。
いまどきのテレビならHDMIの入力端子が数個付いているのが普通だと思いますが、それでもたくさんのゲーム機に加えてDVD/Blu-RayプレーヤーやHDDレコーダーを使っていると入力端子が足りなくなりますよね。
でも、ゲーム機やAV機器を使うたびに端子を抜き差ししていたらめんどうだし、故障の原因にもなりかねません。
そんなとき便利なのが、スイッチひとつで映像を選べるHDMI切り替え器です。
私自身はゲーム機は使わないし、AV機器もそれほど持っていないので家庭用としてはTVの入力端子で充分です。でも、仕事用としては必要性がありました。
プレゼンテーションでのiPhoneとPCの使い分けがめんどくさい
実は昨年(2018年)夏から今年の2月にかけてスマートフォンを使った講習会を月一回ぐらいのペースで担当していました。
スマートフォンで撮影した写真をSNSに投稿しようという超初心者向けの講習会なんですが、写真の基礎についての説明はPCで行い、SNSの使い方はスマホの画面で紹介と使い分けていました。
どちらもHDMIで出力した映像をプロジェクターに投影します。
PCとスマホを切り替えるたびにHDMIケーブルをつなぎ替えればいいんですが、実際にやってみるとこれがけっこうめんどうです。
切り替えた映像を認識してプロジェクターの画面に表示されるまでに結構時間がかかるし、つないでもうまく認識できないこともあって、講習会のスムーズな進行を妨げていました。
HDMI切り替え器にもいろいろある
そこで目を付けたのがHDMI切り替え器です。切り替え器にあらかじめPCとスマホを接続しておけばあとはスイッチを押すだけで切り替えられるので、つなぎ直しによるトラブルを避けられます。
入出力端子の数
ネットで探してみるとたくさんのHDMI切り替え器が見つかります。
- 2台の入力を切り替えられるシンプルなもの
- 入力の切り替え/出力の切り替えどちらにも使えるもの
- 4台以上の切り替えが可能なもの
- 4台以上の入力と2系統の出力の組み合わせを選べるマトリクスタイプ
いろいろありますが、入力端子が多いものは基本的に家庭でのゲーム機/AV機器用だから、出先でのプレゼンテーション用にはムダです。
HDMIのバージョン
もうひとつ、扱える映像信号の問題があります。簡単に言うとHDMI 1.4規格対応か2.0以上の規格対応かといったところです。
HDMI 1.4は4K30Hzまでしか対応しませんが、HDMI 2.0になると4K60Hzにも対応できます。
家庭用ならHDMI 2.0対応の製品を選んでおいたほうがいいでしょうが、プレゼンテーション用に割り切るのならそこまでの必要はありません。
外部給電
HDMI切り替え器には、外部給電が必要なもの、つまり電源を用意しなければならないものと外部電源が不要なものの2タイプがあります。
外部電源を必要とするものは、さらにACアダプタを使用するものとUSBで給電するタイプに分けられます。
ACアダプタ使用の場合は家庭用コンセントの近くに設置しなければなりませんし、USB給電ならパソコンやモバイルバッテリとUSBケーブルで接続しないといけません。
iPhoneでプレゼンを行う場合はそもそもHDMI信号を出力するのに外部電源が必要だからモバイルバッテリを持ち歩いているし、PCからのUSB接続でも電源をとれるのでさほど問題ではないでしょう。
ACアダプタタイプの場合はアダプタも別に持ち運ばないといけませんから、USB給電モデルを選んだ方が賢明です。
リモコンの受光部
入力端子が3つ以上あるHDMI切り替え器の多くはリモコン操作が可能です。
せっかくゲーム機やAV機器をつなぎ直さずに切り替えられるようになったのに、切り替えのたびに機械のそばまでいかなければならないのはムダだから、当然といえば当然ですね。
ところが、入力端子が多い家庭向きの切り替え器だと、リモコンの受光部が独立していてケーブルで接続するものがほとんどです。
受光部が独立していれば、切り替え器本体は見えにくいところに収納しておくことができますから、部屋がすっきりしますね。
でもモバイル用途となると話が違ってきます。出先でプレゼン用機材をセットするのにリモコン受光部が独立していると、持ち歩く荷物が増えるしセットアップもひと手間増えます。紛失や破損の可能性も出てくるでしょう。
プレゼン用に限っていえば、切り替え器本体にリモコン受光部を内蔵しているモデルのほうがお薦めです。
VGA変換と音声分離出力
HDMIは映像と音声をまとめて扱える規格ですが、設備の古いAVルームやホールだと設置されているプロジェクターにHDMI端子がない場合があります。
このようなときは、HDMIからVGA端子へ変換するコネクタやケーブルが必要です。VGA端子とは昔のパソコンに使われていた映像出力用の端子で、簡単にいうとパソコンの画面をディスプレイに表示するためのものです。
コネクタの形は台形で、信号を伝えるピンが3列に並んでいて、D-Sub15ピンコネクタともいわれます。
ここで注意が必要なのが、VGA端子は映像専用で音を扱えないという点。VGAの変換コネクタやケーブルを使ってHDMI端子とVGA入力のプロジェクタをつなぐと映像は表示されますが、音は出ません。
これを解決するにはふたつの方法があります。
- 音声分離出力機能があるHDMI切り替え器を使う
- 音声分離出力機能があるHDMI>VGA変換コネクタを使う
このどちらかで、映像信号と音声信号を分けてからプロジェクターに両方とも入力してやればOKです。
ただし、音声分離機能があるHDMI切り替え器の多くは、入力端子が多い家庭用モデルです。これは、ホームシアターのAVアンプなどにつなぐことを想定しているためです。
モバイルでのプレゼンに適したコンパクトでは、音声分離出力ができるものはあまり見当たりませんが、皆無ではないのでできればそういったモデルを選んだ方がいいでしょう。
もし音声分離出力付きの切り替え器で気に入ったものがなくても、HDMI>VGA変換コネクタのほうで音声分離ができるものを選べばだいじょうぶです。
もちろん、プレゼンに利用する会場が決まっていてプロジェクターがHDMI入力可能なことが明らかだったら、音声分離機能やVGA変換ケーブルは必要ありません。
私が選んだモバイル向きHDMI切り替え器はコレ
すべての条件を満たしたProzorのHDMIセレクター
以上のような条件をもとに、Prozorというブランドの3×1 HDMIセレクターを選びました。
実用上充分な3入力、1出力
名前のとおり、3入力・1出力で、USB給電。リモコン受光部は切り替え器本体に内蔵です。
入力が3系統あれば、スマホ、PCに加えてもう一台、DVDプレーヤーをつないだり、場合によってはデジタルカメラ内の写真を直接プロジェクターに表示させたりもできます。
実はライブ配信用の簡易スイッチャー的な使い方も想定していますが、全体用の引きと手元のアップ用の2台のカメラ+PCの画面といった使い方にも対応できます。
HDMI 1.4対応なので4K60Hz以上には対応できませんが、プレゼンや会議用には充分でしょう。
音声分離が可能でRCAケーブルも付属
音声分離出力も可能で、音声出力用には3.5mmステレオミニプラグ>RCAプラグのケーブルが付属しています。さらにToslink(S/PDIF)用端子もあるので、光ファイバーケーブルでホームオーディオに接続することもできます(5.1chに対応しています)。
そのほかにHDMIケールとUSB給電用のケーブルがそれぞれ1本付属しています。
子画面を出せるPiPにも対応
さらにもうひとつの特徴として、PiPが可能です。
PiPはピクチャーinピクチャーの略で、画面の中にさらに小さい画面を表示します。
たとえば3つのHDMI入力のうち1番を表示しているとき、2番と3番につないでいる映像を小さく表示できます。
PinPを使えば、サブの映像を小さい画面で確認しながら、タイミングを見て大きい画面に切り替えるような使い方ができます。またサブの入力信号が切れていると小さい画面が真っ暗になるので、接続トラブルのチェックにも便利です。
PiP用にサブ入力の信号が常に入って来ているのだから、HDMIの切り替えが速いのではないかと密かに期待しましたが、実際にはそれほど速いわけではなく多少のブラックアウトは発生します。
とはいえ、ちょっと前の切り替え器のように4~5秒近くもブラックアウトするわけではないので実用上の不満はそれほどなさそうです。
旧式のプロジェクターにつなぐならVGA変換ケーブルも必要
HDMI切り替え器の他に、念のためVGA端子への変換ケーブルもいっしょに購入しておきました。1080P対応なので、もちろん4K映像の表示はできませんが、プレゼンテーションの場合フルHDに対応していれば充分でしょう。
Prozorのほうで音声分離ができるので、こちらは音声分離のないシンプルな変換ケーブルを選びました。
低コストで現場でのトラブルを解消できる
これで、出先でのプレゼンテーションが快適に行える環境が整いました。
プロジェクターや大型モニタで発表を行うとき、スマホとPCの画面を使い分ける方はあまり居ないかもしれませんが、地方自治体が管理するAVホールの管理担当者にはこういった機材にあまり詳しくない方もおられるようです。
セミナーを主催する側としては、利用する会場に応じてこのような小道具も揃えておけばいろいろなケースに対応できて現場でのトラブルが減ると思います。
参考にしていただけたら幸いです。