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キートップ形状と配置が打ちやすく気持ちいいキーボードを決める

キーボード選びで、これまで特にキースイッチに焦点を合わせて紹介してきましたが、実はもうひとつ重要なポイントがあります。それがキートップの形状とキーの並び方です。

平べったいスイッチが並んだだけのキーボードとはまったく違う、手の動き、指先の感触にこだわったキーボードは、打っていて気持ちいいだけでなく、正確なタイピングをマスターする手助けにもなります。

 

メカニカルキーボードがデコボコごついワケ

薄型のノートパソコンが普及して、平べったいキーボードを見慣れた今となっては、いかにもスイッチがたくさん並んだメカニカルキーボードのデコボコしたデザインは不思議に思えるかもしれません。

しかも、よく見ると微妙にくぼんだりカーブを描いたりと、かなり複雑な形をしています。なぜわざわざ複雑でお金のかかるそんな形にしたのでしょうか?

 

初期のパソコンカタログを飾った魅惑のキーワード

1980年代のはじめ、まだパソコンが実用品じゃなくマニアの趣味の道具だったころ、低価格で入門者向けのパソコンのキーボードは四角いキャラメルを並べたようなただのスイッチになっていました。それもゴムのようなぐにゃっとした感触で、タッチの気持ちよさとは無縁です。

 

それに対して中級~高級モデルになると、キーの打ちやすさをアピールすることばが必ずと言っていいくらい使われました。それがシリンドリカル・ステップスカルプチャです。

 

入門用パソコンはぐにゃっとしたキースイッチ

そのころまだ、実用的に使えるワープロも表計算ソフトもなく、WindowsのようなOSすらありませんでした。

パソコンはBASICというプログラム言語を使ってプログラミングを勉強するか、パソコン雑誌で発表されるゲームのプログラムを自分で打ち込んで遊ぶ高級なおもちゃだった時代です。

パソコンを勉強するといえば、そのままプログラミングを勉強することを意味していましたが、初心者は高速でキー入力することなんてできませんから、キャラメルが並んだようなキーボードでも問題なかったのです。

 

中級機以上ではキーの打ちやすさも重視

しかし、本格的にプログラミングするようになると打ち込むソースコード(コンピュータに実行させる命令)もかなりの量になるんで、キーの打ちやすさがだいじになってきます。

そこで中級以上のパソコンは、メカニカルキースイッチを使ったキーボードを採用し、そのキートップの形状にシリンドリカル・ステップスカルプチャが使われました。

ぐにゃっとした感触のボタンを一個一個目で確認しながら押していくんじゃなくて、ソースコードを見ながらスムーズな指さばきで入力していくのは、パソコン上級者をめざす人の密かなあこがれだったんです。

 

 

指に吸い付くような形状と打ちやすさ

シリンドリカル・ステップスカルプチャを簡単に説明すると、ひとつひとつのキートップの形とキーの並び方を、人間の手の動きに合せて最適にしようという人間工学に基づいたデザインです。

 

キーのひとつひとつがくぼんでいるのが「シリンドリカル」

シリンドリカルというのは円筒形という意味です。もう少し詳しくいうと、この場合は円筒の内側を意味します。

キーのトップがまるで円筒の内側のようにすこしくぼんでいて、その分左右が高くなっている形状が「シリンドリカル」です。

 

真ん中が少しくぼんでいることで、キーの中央が自然と判りやすくなるので、ホームポジションに手を置きやすくなるし、キーの中央を押しているかどうか感覚的にわかってきます。

タッチタイピングを覚えたい人には有利な形状です。

ホームポジションマーカー

キートップがくぼんでいるのが判ります。

上の写真は、最近買ったArchissのProgresTouch RETRO Tinyというメカニカルキーボードです。よく見ると、白く光っているハイライト部分の場所がキーによって違います。

これはキーの上面が少しへこんでいるためです。この形状がシリンドリカルです。

 

階段状に段差がある「ステップ」

パソコン用キーボードは、スペースキーなどがあるいちばん手前から【Z】の段、【A】の段、【Q】の段、そして数字キーの段というように4段に並んでいます。

この4段の高さがすべて一定ではなく、奥へ行くにしたがって高くなっているのが「ステップ」です。

ホームポジションより遠い数字キーの段をいちばん高くすることで指を伸ばしたときに打ちやすくなります。逆に、手前の【Z】段やスペースキーなどを低くすることで指を曲げた状態でもムリなく打てるようになっています。

 

指の動きに合せて並べた「スカルプチャ」

ステップは単に高さを変えただけですが、さらに打ちやすくするため指の動きに配慮したのが「スカルプチャ」です。

キーボードに手を置いたとき、指の第2関節が自然と曲がります。そして手前の段を打つときは第2関節がさらに曲がり、上の段を打つときは逆に関節が伸びますね。この動きを横から見ると、第2関節を中心にした扇型になっています。

この扇形の動きに合せてキートップの傾きを調整することで、打鍵したときになるべくまっすぐに(直交するのに近い角度に)なるように配置されています。

ステップスカルプチャ

指の動きに合せ段差とカーブがついています。

上の写真は、ArchissのWebサイトからお借りした、ProgresTouchシリーズキーボードのステップスカルプチャについての説明です。

高さが違うだけでなく、段によってキートップの角度が違うのがわかります。全体にいうとこれも円筒の一部を切り取った弧のようになっていて、指先の動きに合せて配置されているのがわかります。

 

 

タイプ入力にこだわるなら知っておきたい

この「シリンドリカル」「ステップ」「スカルプチャ」の3つを兼ね備えたのが、高級パソコン用キーボードでした。

楽な姿勢で手に負担を掛けずに、長時間の入力作業でも疲れにくく、ミスタイプも置きにくいという人間工学的に理にかなった形状です。

キーのどこに触れているか指先でわかるからホームポジションを自然に覚えられるし、それによって滑らかな運指も可能になり、タッチタイピングの習得にも有利です。

 

一見影が薄くなったけど

ノートパソコンの普及などもあって薄型のキーボードに慣れた人も多くなったため、一時期このようなキーボードはあまり見かけなくなりました。

いまでは、タッチスクリーンで入力することも多いので、キーボードの感触にこだわるというのを感覚的にわからない人も増えているでしょう。

同時にシリンドリカルステップスカルプチャということばそのものも、忘れ去られていくようです。なにより、キーボードメーカーのWebサイトでさえ、特徴として掲載されていないことすらあります。

 

メカニカルキーボードには未だに多い

でも、シリンドリカルステップスカルプチャ形状そのものがなくなったわけではありません。それどころか、私自身最近やっと気づいたように、ゲーム用キーボードの世界では、メカニカルキースイッチとともに、シリンドリカルステップスカルプチャ形状がまだしっかり生き残っています。

ほかにも、私がキーボード選びで候補にしたFilcoやArchissのようにゲーム用はあまり意識していないと思われるキーボードも、メカニカルスイッチタイプならだいたいシリンドリカルステップスカルプチャになっているようです。

 

探せば実はメカニカルタイプ以外の選択肢も

また、シリンドリカルステップスカルプチャ自体は、キースイッチの種類とは関係ないので、なにもメカニカルキーボード専用というわけではありません。

タイプ音などの理由でメカニカルキーボードを使いづらいオフィスでも、タッチにこだわるならメンブレンスイッチ+シリンドリカルステップスカルプチャのキーボードを選ぶ価値はあると思います。

作業性や正確なタイピングにこだわるなら、シリンドリカルステップスカルプチャ型キーボード。ネット通販サイトなどでじっくり探してみてください。

タイピングが苦手な人、これから上達したいと思っている人には特にお薦めです。

 

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