はクリップ(ループ音源)やワンショット(ループしない一回再生のみの音源)の録音・再生以外にも、さまざまな操作が可能です。
ギターアンプに搭載されているUSB-MIDI端子を使って、アンプの内蔵エフェクトを切り替える設定を作ってみました。
MIDI対応機器であればアンプ以外でも同様に操作可能と思われるので、フィジカルコントローラーの代用になりそうです。
この記事の目次
アンプの内蔵エフェクトをMIDIで一括チェンジ
Loopy Proは単なるループ音源の録音再生だけでなく、複数の音源をミックスしてバランス調整したりエフェクトを挿入するといった音響ミキサー機能、録音したクリップをつないで一曲に仕上げる機能などを備えたDAWのようなアプリケーションです。
また、ユーザーは自分の好みに応じて操作画面をレイアウトできます。
今回はボタンを配置してそこにMIDIコマンドを割り当て、ギターアンプの内蔵エフェクトを操作してみました。
ギターアンプはUSBケーブル接続なので距離に限界はありますが、リモート操作が可能になります。
複数の連続する動作をひとつのボタンに割り当てることで、ワンタッチで大きく音色を変化させることも可能です。
Loopy Proを使ったMIDIコントロールできること(一例)
- 内蔵エフェクトのオン/オフ切り替えやエフェクト量の調整
- エフェクトの切り替え
- タップテンポの設定
- アンプタイプ(プリセット/パッチ)の切り替え
- 曲ごとに異なる音色設定をボタンに登録し、セットリストを作成する
- 複数のセットリストを作成しステージごとに使い分ける
今回使用するLine6 Catalystのようにアンプ本体で複数の設定を変更するのがめんどうな機種でも、ワンタッチで一括切り替えできるようになります。
今回設定する項目
実際にMIDIでの操作が可能か、以下のような簡単な動作チェックをやってみました。
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ブースターのオン/オフ切り替え(トグル動作)
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ディレイのオン/オフ切り替え(トグル動作)
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タップテンポの設定
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エフェクトの切り替えとリセット(連続動作)
このうちエフェクトの切り替えについて具体的に説明しておきます。
Catalyst ではブースター、エフェクト、リバーブの3つを独立して操作できます。
このうちエフェクトは、ディレイ系、モジュレーション系、ピッチ/フィルター系の3グループに分かれていてさらにそれぞれ6種類のエフェクトがあり、その中からひとつだけを選んで使用できます。
私の場合、基本ディレイだけあればいいんですが、たまにベースの代用にオクターバーを使いたいことがあり、Catalystではこのときだいたい以下のような手順が必要です。
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エフェクトをオンにする
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エフェクトのタイプをディレイからピッチ/フィルターに変更する
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ピッチ/フィルターの中からオクターバーを選択する
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エフェクトの適用量を最大にする
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エフェクトの位置をPreに変更する
5.については、エフェクトのかかる位置をプリアンプの前にするか後にするかの選択です。ふだんはディレイにセットしてあるのでプリアンプの後ろでエフェクトがかかるようになっていますが、オクターバーを使うときだけ前でかかるように変更します。
これらのうちとくに1.~3.は順番に変更しないと設定がおかしくなるので注意が必要。
また設定を元に戻すためのボタンも作成します。
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エフェクトの位置をPostに変更する
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エフェクトの種類をピッチ/フィルターからディレイに変更する
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ディレイの種類をSimple Delayに変更する
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エフェクトの適用量を"10"にする
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エフェクトをオフにする
ディレイについてはふだんはオフにしてあり、必要なときだけオンにするためのボタンを別に作ります。
適用量を"10"ディレイ音を聴いたうえでの単なる好みです。
MIDIコントロールできる範囲
ちなみにアンプのカスタマイズツールであるCatalyst Editでも、すべてのパラメーターをMIDIで操作できるわけではありません。
上の図の赤枠で囲った部分はアンプ、エフェクト、リバーブのアドバンスドコントロールで、ここはMIDIでは直接操作ができないため、アプリ上で設定しておく必要があります。
たとえばディレイタイムを4分音符するか、8分音符にするかといった指定はMIDIではできません。
どうしてもこの部分を変更したいのであれば、アプリ上で設定したサウンドをアンプチャンネルに保存しておき、チャンネルごと切り替える形であればMIDIでの操作も可能です(今回は扱いませんが)。
ただし6バンク×2チャンネルの12パターンしか保存できないので自由度はあまり高くありません。
Loopy ProでMIDIコマンドボタンを作成する
では、Loopy Proで実際にボタンを作成していきます。
レイアウトの紹介
まず、今回作成したレイアウトを紹介します。
この図の上にある5つの矩形のボタンを作成しました。
下側にあるミキサー部分はMIDI操作には関係ありませんが、消す/隠す方法がわからないのでそのままにしてあります。
5つのうち下段にある3つの小さいボタンのうち、左と真ん中はそれぞれブースターとエフェクトのオン/オフのみを行ないます。
エフェクトは基本的にディレイしか使わないので事実上はディレイのオン/オフボタンとなります。
右はタップテンポ用で、連続タップしたときの間隔をもとにテンポを設定します。実際の設定としてはふつうのタップと同じです(連続操作に関する特別な設定はいりません)。
上のふたつは先に説明したエフェクトの切り替え用で、コマンドを連続実行します。
右側がオクターバー設定用で左はそれを解除してギター用に戻すためのボタンとなります。
新規のプロジェクトを作る
ではMIDI操作用のプロジェクトを作っていきます。
Loopy Proの基本画面のいちばん上に並ぶボタンのうち、左端のアイコンをタップするとプロジェクト管理画面になります。
ここで[New Project]を実行。
あらたなプロジェクトが作成されるので、左下のアイコンからペンシルを選びます。
これでレイアウト編集モードになりました。
使わないClipを削除する
初期状態ではループ音源用のクリップ録音エリア10個が配置されていますが、今回は使わないのですべて削除しておきます。
クリップの横や下にある[-]ボタンをタップするとコマンドが現れ、行単位や列単位で一括削除できます。
ただし最後の1行や1列は消すことができません。たとえば行単位で消していくと最後に2個が必ず残ります。
このときはクリップのサークル上を長押しすると、クリップ単位での削除が可能です。
クリップをすべて消すと、空の行と列だけが残る状態になります。
ボタンを配置する
空っぽになったところに、下のツールパレットからボタンをドラッグして配置します。
ボタンを追加したり、枠をドラッグしてサイズを変更しレイアウトを修正します。
位置の移動はボタン上をタッチしてドラッグ(スワイプ)。サイズを変更するときはボタン上をプレス(長押し)するとDeleteやCopyコマンドのほかに、枠の周囲にドットが現れるのでそこをスワイプ。
こうして作成したのが最初に紹介したレイアウトです。
ボタンにコマンドを割り当てる
配置したボタンにMIDIコマンドを割り当てていきます。
ボタンをタップすると次のようなメニューが現れます。
これはボタンに割り当てる操作のリストです。
ボタンを押したとき(Press)、放したとき(Release)、ダブルタップしたときなどさまざまなアクションがありアクションを選んでコマンドを割り当てていきます。
今回はトグル(Toggle)とプレス(Press)のふたつを使います。
Toggleは実際にはタップ操作なのですが、実行したときの結果が異なるので、便宜上分けられているようです。
トグル操作の割り当て
まずToggleを設定します。右側の[+]ボタンをタップして新規の動作を追加すると割り当てるアクションのリストが出てきます。
Toggleに限らずどの操作に対しても、このリストは共通です。
かなり数が多いので検索ボックスを使ってMIDIに関係するものだけに絞り込みました。
するといちばん下に[Send MIDI Message]とあるので、これを使います。
タップするとMIDIメッセージ送信の設定画面になります。
ここではターゲットとメッセージの設定を行ないます。
先に相手機器と接続
送信相手となるMIDI機器を接続しておく必要があるので、先にCatalystの電源を入れ、USBケーブルでiPhone/iPadと接続しておきます。接続にはカメラアダプタ(OTGアダプタ)が必要です。
まず、ブースターのオン/オフを設定します。
Catalystの取り扱い説明書11ページにあるMIDI実装表で実行したいコマンドと使用するMIDI信号の設定をチェックするとCCナンバーは25、値は0~63がオフ、64~127でオンになることがわかりました。
そこで”Message"のところで設定を行ないます。
メッセージタイプは”CC”を選択し、下段のスライダーをスワイプして”CC 25”になるように設定します。
この画面には値を設定する項目がありませんが、オン/オフの切り替えしかしないので設定項目自体が省かれているようです。そのためPressとは別にToggleの項目が設けられているんでしょう。
本来はチャンネル設定も必要ですが、Catalyst、Loopy Proともにデフォルトチャンネルが1なので、とくにいじる必要はありません。
さらにTargetで送信相手のMIDI機器を設定します。
今回はもちろんLine6 Catalystを割り当てます。
最初の段階ではTargetが”None”になっているのでここをタップします。
すると指定可能なMIDIデバイスが現れるので”Catalyst 60-112"を選択します。
先にCatalyst(MIDI機器)を接続しておかないと選択肢が出てこないので要注意。
[Back]をタップして元の画面に戻ると、Toggleのところに次のように表示されています。
これでCatalystのブーストを操作できるようになりました。
ボタンをタップするたびにオン/オフが切り替わります。
あとはボタンの名前をつけておきます。今回は"Boost”にしました。
同様の手順でディレイのオン/オフも設定します。
連続動作をPressで割り当てる
続いて連続操作の設定を紹介します。
先ほどは単純なオン/オフ切り替えだったのでToggleを使用しましたが、今回は値の指定が必要なのでPressを使用します。
まだ完成前のスクリーンショットですが次の図のような感じで複数のコマンドを追加しておくと上から順に連続実行してくれます。
設定画面は次のようになります。Toggleと違い、Pressでは値(Value)の設定項目が追加されています。
逆にいうとToggleはオン/オフを繰り返し切り替えるだけなので値の設定は省略されています。
CC="19” Value="2"はピッチ/モジュレーションの選択となります。
あとはMIDI実装表を見つつ実行の順序を考えながらコマンドを追加していけばOK。
登録したコマンドの順番を並べ替える機能はないようなので注意が必要です。追加前に実行順をしっかり検討しておきましょう。
実行タイミングの確認
最後に念のため各MIDIコマンドの実行タイミングを確認しておきます。
デフォルトでは登録したコマンドの順番にしたがって順次実行していくようです。
今回の設定ではこれがだいじで、エフェクトタイプと種類の順番を間違えると正しく設定されません。
一方、場合によってはすべてのコマンドを同時に送信したいといったケースもあります。
そこで各MIDIコマンドに対して実行タイミングを設定できるようになっています。
登録済みコマンドリストの左端にある矢印の部分をタップすると、実行タイミングの設定画面が現れます。
ここには”After Last”、”With Last”、”Next Trigger”の3つのオプションとタイミング調整用のスライダーがあります。
今回の例では、直前のコマンドが実行されたあとすぐに実行すればいいので初期設定のままで構いません。
ちなみに、最初に1個だけコマンドを登録したばあい、3つのオプションはありません。
スライドバーを操作するとさらに「1拍後」や「4小節後」といった演奏タイミングに合わせた細かいコントロールが可能になります。演奏中にアンプ設定を切り替えるようなときに便利でしょう。
タップテンポではボタンを連続してタップし、その間隔をもとに楽曲のテンポを指定します。
Loopy Proのアクションには連続タップに関するものはありませんが、ふつうのタップ(コマンドではPress)を指定するだけで動作することがわかりました。
MIDI実装表によるとValueが64~127の間のどこでも、それがタップ1回になります。
今回は"cc=127”で設定しました。
あとは複数回タップすればそれをCatalystが受信してテンポを設定してくれます。
セットリスト的なプロジェクトの切り替えも
このようにしてアンプのセッティング切り替えを登録できます。
基本的にボタンは際限なく増やせるので、1ステージで演奏する曲のセッティングをすべてボタン化しておけばワンタッチで曲ごとの切り替えが可能です。
さらにそれらを別々のプロジェクトとして保存できます。
自分のバンド用のセッティング、サポートメンバーとして参加するときのセッティングなどの使い分けが簡単にできます。
今回紹介したLine6 Catalystはそもそもパッチまるごと切り替えるような使い方が得意ではないので、それを補うのにはよさそうです。