Spark MINIを運良く旧価格で購入できました。
腕前は万年初心者なのでギターサウンドのことは置いといて、アプリの設定による使いこなしについて少し紹介します。
既存の機材レビューでは見かけない(つまり、個人的に知りたかったけど動画やレビュー記事では見つけられなかった)ポイントにフォーカスしているので、参考になれば幸いです。
この記事の目次
アンプ設定画面へのアクセス方法
この記事で紹介する内容はどれも、Sparkアプリを使用します。
とくにアンプの音作りとは別にBluetoothオーディオの設定が必要になるので、必ず設定しておきます。
まずSparkアプリをインストールし、マニュアルにしたがってアンプとのペアリングを済ませておいてください。
接続するとメニュー画面が表示されています。
以前すでに接続していた場合は画面右下にあるハンバーガーメニューのアイコンをタップすると設定メニューが現れます。
アンプ名のすぐ下に、「トーンコントロール」と「オーディオ」のふたつの項目があります。
初期のペアリングが行なわれているとトーンコントロールのほうだけアクティブになっていると思うので、アンプの画をタップして次の設定画面に移ります。
Bluetoothオーディオの[設定]をタップして、デバイス本体(当記事ではiPhone)のBluetooth設定画面に移動したら、Spark本体の[PAIR]ボタンをプッシュします。
Bluetooth機器のリストに”Spark Mini Audio”という項目が現れるので、それをタップしてペアリングを実行します。
上の図ではアンプ本体の接続が解除されています。
これで、”Spark MINI BLE”と"Spark MINI Audio”のふたつの設定が登録された状態となります。
アンプの接続が切れたばあい
もし”Spark MINI Audio”のペアリング後に、”Spark MINI BLE”の接続が切れていたら、Sparkアプリの画面に戻って[トーンコントロール]のところをタップして接続をやりなおしましょう。
以後は、Sparkアプリを起動すれば、トーンコントロール、オーディオ両方とも自動で接続されるはずです。
Bluetoothオーディオ
SparkシリーズはBluetooth接続に対応しているので、あらかじめ設定しておけば、スマートフォンやタブレットで再生した音声をSpark Miniで鳴らすことができます。
一般的なBluetoothスピーカー同様に音楽再生用としても使えるし、それをバッキングとしてギター演奏もいっしょに再生可能です。
私の場合、スマホのメトロノームアプリを使っているのでアプリのクリック音をいっしょに流してギターを練習しています。
Bluetoothオーディオの音量は、Spark Miniの場合、本体上部にあるミュージックボリュームのノブで調整します。このノブはAUX端子から入力した音とBluetooth接続で再生する音の両方に効きます。
特にギター演奏中の場合、モバイルデバイス側で音量調整するより便利です。
ひとつ注意する点としては、Sparkアプリ上でBluetoothオーディオの接続を許可したあと、Spark本体をいちど再起動する必要があります。
接続設定しただけでは音が出ませんが、慌てる必要はありません。
ラインアウト端子とオプション設定
Spark Miniはステレオミニ端子のヘッドフォンジャックを装備しており、これがラインアウト兼用になっています。
付属のマニュアルによると、ヘッドフォンモードとラインアウトモードの違いは前者がモノラル信号なのに対して後者はステレオになっているということしか触れられていませんが、実はそれにともなってサウンド自体が大きく違います。
ヘッドフォンモード(工場出荷時のデフォルトです)のままPAやパワードスピーカーに出力すると、やたらとリバーブがかかった芯のない音になってしまうので、ギターサウンドにはぜんぜん合いません。
そのためギターの音を出力するには、アプリ側でラインアウトモードに切り替える必要があります。
出力モードの設定はアンプ設定画面の中の”HP/Line Out”という項目です。
初期設定では”Stereo”になっているので、ここを”Mono”に変更します。
こうしておけばSparkのギターサウンドをそのままミキサーやPAスピーカーに流せるので、出力の低いSpark MINIでも大会場でのライブ演奏に使えるようになります。
しばらく触ってみた結果、私の場合、Sparkの音をヘッドフォンで聴くことはまずなさそうなので常に”Mono”モードにしています。
もちろんこの設定はSpeaker出力のほうには影響しないので、Spark本体からはステレオで音が出ます。
EQシナリオ機能
Sparkアンプにはベース用アンプモデルも収録されていることは、レビューでもよく言及されていますが、実はそれだけではありません。
アンプモデル上のEQやエフェクターとは別に、ハードウェアそのものの音質を選択できるようになっています。
それがEQシナリオ(EQ Scenario)オプションです。
初期設定ではいろんな音楽ジャンルに対応できるよう”Balanced”に設定されていますが、そのほかに”Rock”、”Acoustic”、”Bass”の3つのシナリオがあります。
「シナリオ」という名称のとおり好みのタイプをワンタッチで選択でき、イコライザーの設定を細かくいじる必要はありません。
ハードロック/メタルなど歪み系のサウンドしか演奏しないなら”Rock”を、エレアコ用アンプとして使いたいなら”Acoustic”というように、最初から選択しておけばより好みのサウンドが得られるでしょう。
メトロノームもあるるけれど・・・
Sparkを紹介したWeb記事や動画レビューでは練習向きの機能として、スマートJAMやクイックJAMばかりにスポットが当りますが、アプリに実はベーシックなメトロノームも搭載されています。
ただし、機能は最低限で、テンポの設定(タップテンポも対応)とスタート/停止ぐらいの操作しかできません。
音色を変更することもできないし、3連符や16分音符などの細かいパターンを設定するサブディビジョン機能もありません。
なので、サブディビジョンを指定しなくてもリズムをきちんとイメージできる中~上級者なら使いこなせるでしょうが、いろんなリズムパターンで練習したいなら、有料のメトロノームアプリを使うほうがお薦めです。
またメトロノームとチューナーはどちらもメニュー画面の中にあるので、ふだん設定をいじらない人は見落としてしまうかもしれません。
この点は注意してください。
結局 Spark MINIはどんな感じ?
以上は機能の紹介でしたが、最後に少しだけ、私が感じたSpark MINIという機材の特色というかポジショニングについて触れたいと思います。
「練習向き」の意味
Spark シリーズはふつう「自宅練習向きアンプ」として紹介されます。
スマートJAMやクイックJAMといった機能を使うことで、単調な繰り返しのトレーニングにならず、いろんなバリエーションで練習を楽しめます。
しかし、これらはある程度弾けるようになった中級者向きの機能で、本当の初心者にはまだ早すぎるように思えます。
コードフォームをよく知らないとか、コードチェンジにもたついているようなレベルだとちょっと使いこなせないかと。
一方、メトロノームのほう機能がシンプル過ぎです。もちろんテンポの確認には充分ですが、スマホアプリでいろんなリズムパターンのトレーニングができる現在、初心者の練習用としてはちょいともの足りない感じがあります。
「これで充分使える」と言い切れるのは、そこそこ弾けるようになった人でしょう。
小出力はLine Outでカバーできる
Spark MINIは出力が10Wなので、自宅練習用にはほどよい音量です。
10Wでもハイゲイン系のアンプモデルを選んで、フルパワーで鳴らせばかなりの迫力です。
もちろん本格的なバンド演奏には音量が足りないので、そういう意味ではライブ向きではありません。
とはいえ、カフェなど小さなスペースでのイベントで、ギターのみの演奏とか、バッキングがドラムマシンとかだったらSpark MINIだけでもいける場面はありそうです。
もしドラム入りの編成で大きな会場になったとしても、ラインアウト端子からPAに直接音を入れてやればこの弱点はカバーできます。
その場合、自分で作ったサウンドを手軽に持ち運べるので、機材運搬の負担を減らせます。
そう考えると別の意味でライブ向きであるといえなくもありません。
なお、ヘッドフォン/ラインアウト端子にジャックを挿した場合、Spark MINI本体のスピーカーからは音が出ないので、モニタースピーカー代わりに使うことはできません。
サウンド選択の問題
あえてライブ機材としてみた場合、音量の問題はラインアウト+PAでカバーできますが、音色バリエーションのほうが弱点になります。
具体的には次のふたつ。
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Spark MINI本体にはプリセットを4つしか登録できない
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ひとつのプリセット中に音色バリエーションを持てない
サウンド自体はアプリで追加できますが、切り替えにSparkアプリが必要なのでライブ中の切り替えに手間がかかります。
Spark本体に4つのプリセットを登録できますが、ノブでの選択なので曲の途中で切り替えるのは現実的でありません。
2.については、ひとつのプリセットの中で歪み系エフェクトのオン/オフをバリエーションとして登録しておく、といった使い方ができません。
したがって、曲中や曲ごとに積極的に音色を変えたい場合、Sparkアンプは不向きといえます。
ただし、この問題は「Sparkアンプ本体のみ」の場合。
Positive Grid純正のSpark Controlや、Xsonicの AirStepといったコントローラーを追加することでかなり補えそうです。
ルーパーアプリを使う
私はまだうまく使いこなせませんが、ギターの練習にルーパーは強力な武器になると感じています。
自分の演奏をチェックするにしてもいちいちレコーダーをセットして録音するのはめんどうですが、ルーパーがあればフットスイッチだけで録音/再生/停止/消去などを簡単に操作できます。
バッキングをループ再生しながら繰り返し練習できる利便性は圧倒的です。
ただ、ペダル(ストンプボックス)型のルーパーを追加する場合、セットアップ(パワーサプライへの接続など)はちょっとめんどう。
Spark MINIの場合、ほかのエフェクター類はアンプ内にまとめられている状態なのでなおさらです。
Positive GridのアンプシミュレーターBIAS FX2には簡単なルーパー機能まで搭載しているのでぜんぶアプリ上で完結しますが、Sparkアプリの方にはルーパーがないのはほんとうに残念です。
ただしSparkアプリにルーパー機能はないものの、スマホ/タブレット用のルーパーアプリで補えます。
SparkアンプはUSBケーブルでパソコンと接続することでオーディオインターフェイスとしても使えるのはよく知られていますが、もちろんスマートフォン/タブレットでも利用可能です。
iPhoneのばあい、USB-Lightningカメラアダプタ経由で接続します。
スマートフォン/タブレットにルーパーアプリをインストールし、入出力の設定でSparkアンプを指定してやれば、ギターサウンドをオーディオインターフェイス経由で入力し、ルーパー上で録音/再生してSparkアンプへ戻すことができます。
ルーパーアプリは数十トラックも扱える多機能なものが5000円以下で手に入るので、練習用だけでなくパフォーマンス用としても魅力的です。
ルーパーアプリを使ってみた
iOS用のルーパーアプリ、Loopy Proを購入して使ってみました。
メリットや基本設定のポイントを紹介しています。
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アプリ単体だとタッチ操作になりますが、Spark ControlやAirStepのようなフットコントローラーがあれば、ペダル型同様に足での操作が可能になります。
センド/リターン端子の代わりに
もちろん、どんなアンプでもペダル型のルーパーを接続することはできます。
ただ、アンプの前にルーパーを入れたばあい、音色はおもにアンプ側のEQで調整することになります。
ベースパートの録音では低域を強調し、リードギターを練習するときはブーストを掛けるみたいな細かい調整は難しくなります。
そんなときアンプにセンド/リターン端子があれば、アンプのEQで調整した音をルーパーに録ることができます。
オーディオインターフェイス経由でルーパーアプリに録音すれば同様の効果を非常にローコストで実現できそうです。
同様に、ローコストのマルチエフェクターでもオーディオインターフェイス機能があれば(現在はほとんど搭載しているでしょう)、スマホと接続して高機能なルーパーとして使えそうな気がします。
オーディオI/F搭載アンプでも
Spark MINIをUSB接続で使っているウチに、ふとオーディオインターフェイス機能を搭載したほかのアンプやマルチエフェクター/ギタープロセッサでも同じことができるのでは?と思いつきました。
実際にLine6 Spider V20 MkIIで試したところ、期待どおり。
メトロノームアプリの音をギターといっしょにアンプから出力できました。
オーディオインターフェイス機能付きのアンプやマルチエフェクターをすでに持っている人は、試してみてください。
ペダル型ルーパーを使いたかったら
YamahaのTHR 30IIにペダル型のルーパーをつないで使っている動画があります。
アンプのラインアウト端子から出力した音をルーパーペダルにつなぎ、その音をAUXに入力して出力するというやり方です。
ギターのボリュームとAUXのボリュームが独立し、さらにラインアウト専用端子を備えているTHR 30IIならではの使い方です。
どうしてもアプリではなくペダル型のルーパーを使いたかったら、THR 30IIはお薦めです。
Spark MINIの個人的まとめ
というわけで、Spark MINIの基本的なポジショニングとしては、私の観点で次のようにまとめてみました。
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自宅練習にほどよい音量
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いろんな音楽ジャンルに対応できる豊富なサウンドバリエーション
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中級者向けの練習補助機能
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本体のみではバンドのライヴ/ギグには不向き
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PA機材があればLine Outで音量をカバーできる
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曲中/曲ごとのサウンド切り替えには別売フットコントローラーが必須
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スマホアプリのルーパーで多彩なパフォーマンスも可能
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アンプ/エフェクターボード類をコンパクト化(機材の総重量を大幅に軽減できる)
つまり基本的には「練習用」ながら、予算次第ではそこそこの発展性もあって、長く使える機材ではないかと思います。あとは内蔵バッテリーの劣化が少ないことを祈るのみです(ちなみにUSB給電状態でも使えます)