音楽制作の主流がDAWに移行する中で後継機種の登場もあまり期待できなそうな気がします。
DAWにはない、マルチトラックレコーダーの魅力をもういちど振り返ってみましょう。
この記事の目次
マルチトラックレコーダーとは
マルチトラックレコーダー(MTR)とは、名前のとおり複数(一般的にはステレオ2chよりさらに多い)のチャンネルを利用可能な録音機材のことです。
名前からわかるとおり、R16は16チャンネル、R24は24チャンネルに対応しています。
複数のトラックに対応した入力端子を備えているので、ドラムスに複数のマイクを立てて収録したり、バンドの演奏を一発録りするような使い方が可能です。
とはいっても本格的なミキサーとは違い、入力については両機とも8chまで。それ以上のチャンネルは再生用となります。
MTRの機能をパソコン上で再現しさらにパワーアップさせたのがDAWといえますが、現場で手軽にレコーディングしたい人にとっては、ノートパソコン+オーディオインターフェイスを持ち歩かなくていいのはメリットです。
オーディオインターフェイスとしてもマルチトラック
また、今どきのMTRはたいていオーディオインターフェイス機能を搭載しているので、DAWへのレコーディング用にも使えます。
R16やR24も発売からすでに10年を越えていますが、オーディオインターフェイス機能を搭載。
一人多重録音するときも、パートごとにチャンネル割り当てを切り替える手間が省けるので、生楽器の録音やボーカルパートを重ね録りする人にとっては未だに魅力があります。
起動はパソコンに比べて速いし、トラブルの可能性も遙かに少ないので、アマチュアミュージシャンの練習やライブレコーディング用機材としてはいまだに最高じゃないでしょうか。
ダイレクトモニター機能もあるのでSyncroomでの演奏用にもぴったりです。
DAWや動画編集ソフトのフィジカルコントローラーに
R16/R24のもうひとつの魅力はフィジカルコントローラーまたはコントロールサーフェイスとしても利用できるという点。
フィジカルコントローラーというのは、DAWでの再生/停止や音量バランス調整操作などを行う補助機械です。
つまりDAWの操作をパソコン画面ではなく、手元のMTRから行えるというわけ。
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それにどんなメリットがあるでしょうか?
DAW上で各トラックの音量を操作するときはマウスなどのポインティングデバイスを使うので、いちどにひとつのトラックしか操作できません。
それに対し、フィジカルコントローラーなら、両手が使えます。親指と小指は省くにしても両手の6本の指で6トラックのフェーダーを一気に操作できるというわけです。
DAWだけでなく、動画編集ソフトでもフィジカルコントローラーに対応しているものがあるので、動画の音声編集にも使える可能性があります。
セリフのトラックを聴きながら、BGMや効果音のトラックを一気にまとめて操作できるので編集の作業効率が段違いです。
R16/R24はMacie Controlに対応しているので、同規格に対応した動画編集ソフトであればフィジカルコントローラーとして使えるわけです。
再生/停止、ミュートなどの操作が手元でできて、さらにファンクションキーをカスタマイズすればマーカーの設定なども可能になります。
その他の機能もいまだに魅力
ほかにもR24にはリバーブ/ディレイ/フランジャー/コーラスなどのエフェクターを搭載していますが、さすがに10年以上前の設計なので音楽制作用としては最新機種に見劣りがするかもしれません。
それでも動画編集時の音声加工用としては、工夫しだいでまだまだ使い途がありそうです。
さらにR24になるとパッドサンプラーやリズムマシンも内蔵しているのでバンド練習用、DAWを使わない生楽器プレイヤーにとってはいまだに強力な一台です。
映像制作用ならR24がお奨め
R16/R24が生産完了になってしまう一方で、DAWが主流となった現状では今後後継の機械が発売されることは期待薄でしょう。
実際、ZOOMのR20はタッチスクリーンを備え、やや高価格帯にシフトしています。
オーソドックスで低価格なMTR
実は大手通販サイトではすでにR16は完売になっているところが多く、新品を入手するのは難しいようです。
一方、R24はやや価格が高かったせいか、Amazonではまだ新品の在庫が見受けられます(2022年6月12日現在)。しかしそれも長くはないでしょう。
ところで、実はR16とR24では目につきにくいところで意外に重要な違いがあります。
それは録音フォーマットです。
R24は16ビットまたは24ビットで44.1kHzと48.0kHzに対応。
一方R16は16ビットまたは24ビットですが、44.1kHzのみ。48.0kHzをサポートしていません。
なので動画編集時にナレーションの録音や効果音の自作などを考えているならR24のほうがお奨めです。
純粋に音楽制作用だったら44.1kHzのみのR16でもいいでしょう。ただし前述のとおりすでに入手困難な状況です。
ちなみにオーディオインターフェイスとしての仕様を見ると、どちらも、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHzに対応しています。
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2ch入力でよければR8もあり
同時録音は2chだけで構わない、再生トラックも最大8つで充分、と割り切れるならむしろ下位機種のR8が狙い目です。こちらはまだ生産完了のアナウンスがないので、今後もしばらくは入手可能でしょう。
ただし、半導体不足が続いていますから、お取り寄せには時間がかかるかもしれません。
なお、R8の録音フォーマットは48kHzにも対応しているので、スペック的にはR16より上。R24と同等です。オーディオインターフェイスとしては2ch入力/2ch出力になりますが、サンプリング周波数も96kHzまで対応しています。
コンパクトなフィジカルコントローラーとしても魅力的ではないでしょうか。